洗濯物


 私は居酒屋『ご機嫌な天使』で、アルバイトをしています。

 メイド喫茶ではありませんよ、制服なんてありません。

 私物の服の上に、オレンジのエプロンをしています。


 いつもの生成きなりの服の上に、この鮮やかな朱色のエプロンはよく似合います。

 サリーさんの悩殺の着方も、隠してくれるので助かります。


 でもサリーさん綺麗ですね……


 私は初めてのエラムでの夜、サリーさんと過ごしたことを思い出して、一人で赤くなっていたようです。

 サリーさんが心配そうにしていますが、

 私が「サリーさん綺麗ですね」と、思わず言葉をかけますと、サリーさんも赤くなりました。


 私は、宿のお客さんの繕い物や、料理の手伝いなど雑用をしています。

 ときどき洗濯などしますが、男物の下着があっても、私は昔が昔なので平気です。

 グスタフさんには、変な奴と思われたかもしれません。


 私が男物のパンツを洗っていると、「お嬢様、おいたわしい」と、サリーさんが涙目になったりします。

 サリーさん、私は気の毒なお姫様ではないのですよ、ちょっと妄想の世界に入っていますよ。


 あるとき、女物の下着の洗濯を頼まれました。

 この世界の女性の下着って、腰巻と思っていましたが、事実、私も腰巻をしていますが、ブラとショーツのようなものもあるのですね。


 そういえば古代ローマでは、女物のこのような下着もあったような……

 確かシチリア島から出土したモザイク画を、インターネットで見た記憶があります。


 サリーさんに聞いてみますと、このようなものは貴族、それもかなり身分の高い女性が身につけるものだそうです。

 そこらの貴族や庶民の女性は腰巻です。


 ちなみに数は少ないけど、体を使う女性はふんどしの様な物を身につけるとか。


 まあ、海女さんなども身につけていたことを思い出し、あまり女性の下着は変わらないと感じましたね。

 でもサリーさんに出会った時、確かその貴族の女性のようにブラとショーツ、いやズロースをつけていたような……


 でも、でもでも、今のサリーさんは私のようにノーパン???

 ちょっと想像してしまった、あぁ私、壊れていく。


 そんな私を見て、サリーさんが例のとんでもない色気を出しながら、

「お嬢様、私の裾をめくってみます……いつでもお待ちしていますよ、私はお嬢様の物ですから……」

 サリーさん、くらくらしますから、私の胸をさわらないでくださいな……あぁ……


 何とかサリーさんを振り切り、洗濯物をとどけに、持ち主の部屋のドアをノックしました。

 中から「あいてるぞ」と女性の声が聞こえます。


 部屋へ入ると、中には背の高い、多少大柄だが引き締まった体の、赤毛の美女が、剣の手入れをしていました。


 私が、「洗濯物をお届にきました」と言うと、「そこに置いてくれ」と、いいます。

 そこで、部屋の中のチェストの上へ置こうとすると、汚れのついたふんどしみたいなものが、ほうりだしてありました。

 初めてみました、女性のふんどしを。


 私が驚いた顔をしたのを見て、その女性は、返り血をあびて、下着までしみ込んだのだ、といいました……

 でも今、何といいました?


 返り血?


 それが下着にまでしみ込む?

 この人は何をしてきたのですか?


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