商都ホッパリア


 ホッパリアはアムリア帝国の経済の要で、この大陸でも有数の都市と聞きました。


 二つの大河が合流する場所にあり、古来より交通の要所で、帝国の物産のみならず、ホラズム王国やフィン連合王国の物産が集まる場所とのことです。


 また海路から大河を遡り、ジャバ王国との奴隷貿易も行なっており、人攫いも裏では行なわれていると、商人さんたちが気をつけるように忠告してくれました。


 駅馬車はちゃんと四日でたどり着きました。

 さすがに大陸有数の都市、高い城壁に囲まれ、城門には騎士の一団がたむろして、旅人を検問しています。


 私たちの番になると、ビクトリアさんに対して敵意を持つ者や、親しそうにする者などいろいろ見受けられます。


 私たちの手形をサリーさんが渡すと、さすがに丁寧に扱われ、袖の下を要求されることも無かったです。

 ただ魔法士と書かれているので、魔法を見せろといわれましたね。


 常に手に持っている愛用の電撃スタンガン杖?を取り出し、通常に放電させると納得していました。

 その効果が感電させる程度の、護衛用ということを確かめたので、そのまま通してくれました。

 ちなみに実験台になった騎士さんは、かわいそうなことになっていました。


 私たちは宿をとり、魔法の勉強にきたと称して、街の図書館へ通っています。

 庶民は立ち入り禁止ですが、アンリエッタさんの用意してくれた手形が効力を発揮して、ヴィーナス・セリムとして通してくれました。


 図書館通いの道すがら、この街の人々の生活を垣間見ましたね。

 おおむねこの街は、高度な文化水準ですが、モラルの低下が見られます。

 すべてとはいいませんが、金銭が優先されるような感じがします。

 まぁ商都ですから、しかたないのかもしれませんが、商道というのか家訓というのか、モラルに根ざした価値観とかが、足りないような気がします。


 私はある落語を思い出して、しかたがありません。


 題名は忘れましたが、確か、川に小銭を落とした商人が、人を雇い大金を使って、小銭を拾う話だったと思います。

 その商人に向かってある人が、無駄だといいますと、その商人は小銭をそのままにしてしまうと、本当の死に金になる。

 人を雇い大金を使って、小銭を見つけ出せば、小銭も再び使用できる。


 多くの人に、日々の糧を得る手段を提供し、そのお金は回りまわって、私の商品を購入してくれるかもしれない。

 生きた金を使うことが肝要だ……確かこのような話でした。


 少し、男性の思考になっているのに気がつきました……このような思考は必要です。


 お金が無いのは寂しいし、生きていくには困難な状況が発生する。

 私たちが生きていくうえで、ささやかなお金があれば、ささやかに生きていける。


 この街の人は、発展する経済力に酔うあまり、何かを忘れたのではないか?

 地球での体験が、私にこの街の問題を囁いています。

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