決意


 さらに一月たちました。

 私の隣には、サリーさんがピッタリとくっついています。

 さらにもう一人、ジャン君も私の側にくっついています。


「ねえ、下のお姉さん」と、ジャン君が喋ってきます。

「好きな人いるの?」

 私はどうして聞くのと聞き返すと、ジャン君は「下のお姉さんがフリーなら、僕のお嫁さんになってもらうんだ!」

 私は少々驚きましたが、でもよく考えると男の子って、こんなことをいうのですよね。


「ジャン君、少し遅かったわ、私には素敵な人がいるのですよ」

 ジャン君は少しがっかりした顔をして「そうなの」と云いました。

 するとサリーさんが、「ジャン君、私ではだめ?」と云いますと、

 ジャン君、「上のお姉さんでもいいんだけど、お料理が上手くなったら、お嫁さんにしてあげる」


 これは効いています、サリーさんため息をついています、ジャン君ここで決定打を放ちます。


「上のお姉さんも、いつかいい人ができるよ、そこそこ綺麗なんだから」と、

 サリーさんが「そこそこですか」と、なが~いため息をつきました。


 私は毎日、教会の祭壇で、考え事をすることにしています。

 この世界に来た時も、祭壇の上でした。

 あの祭壇も、このような教会の中にあったのでしょう。

 遥かな昔、敬虔な信者が祈りを献げていたのでしょう。


 この祭壇で、私は女性を一人治療しました。

 この世界では絶対にありえない力を、いとも簡単に使用しました。


 世界を救ってくれとの手紙を受け取り、世界の終末を決める力を持っている私。

 思うに、もう私は人ではないと実感します、確かに私の体は再構成されたものです。


 この再構成という力を、私はアンリエッタさんに行使したのでしょう。

 あのイメージという概念は大変なものです。

 これはきっとだれでもできるものではないでしょう。


 私は手紙を取り出して、再び読み始めました。

 黒の巫女様……


 この世界は、私の先祖が作り出した世界、私はこの世界に否応なしの負債を持っている。

 短い間にですが、この世界の病んでいる姿が、垣間見えている。

 人が人をおとしめて、成り立つ世界らしい。


 でもこの世界も、満更でもないかもしれない。

 ピエール一家の幸せそうな、今の姿を思い出す。

 サリーさんの献身を思い出す。

 短い間にも、この胸に、温かいものを感じさせる人々がいる。


 私は世界をめぐる、間違いではない。

 世界を見聞する、間違いではない。

 急ぐことは無い、しかし間違いは許されない。

 この世界を双肩に担うことになる。


 いま私は吉川洋人の思考で考えている。

 地球で、私は人に誇れる頭脳をもっていた、その冷徹な思考が、その昔の格言を私に突き付ける。


 賽は投げられた。

 ルビコンを渡る時だと。


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