死の女王


 ドアを電撃でぶち壊して廊下に出ますと、その衝撃で騎士の格好をした男が、二人ほど転がっています。

 サリーさんがライフルで、素早くとどめを刺しました。

 あとで手を合わせてあげますよ。


 階下には、手に武器を持ったガラの悪いのが、どこから湧いたのか、たむろしています。

 あわてることはない、と言い聞かせ、ゆるゆると階段を下りて行きました。


 まるで女王のように、威厳を持って。

 私の後ろを、サリーさんがしずしずと従ってきます。


「外へ出なさい。私たちに勝てる自身があるなら、外に出て私を押し倒してみなさい、そのときは足でもなんでも、開いて見せましょう」

 ガラの悪いのが、好色そうな顔をしてぞろぞろと外へ出て行きます。

 私も広場へ出ました。

 いるいる、こんなにも醜悪な者たちが、世界にいるのかと思いました。


 私の手にした警杖型スタンガンの先端が、青白く光り始め小さい放電現象をおこしています、まるで稲妻が踊っているようにね。


 矢が私に向かって放たれました。

 稲妻がそれを掴むように絡まり、シュと小さな音がして、黒こげになって落ちてしまいます。

 これをきっかけに、四方から矢が飛んで来ましたが、一つとして当たりません。


 私は言ってのけました。

「私に矢を射った以上、ここで死んでもらいましょう、命でその罪をあがないなさい」

 このとき、私は『死の女王』の名が似合っていたでしょう。


 私は警杖型スタンガンを、天に突き上げ唱えました。

「ストロングサンダー・イン」

 ものすごい放電現象が起こり、青白い稲妻がガラの悪いのに突き刺さっていきます。

 閃光と雷鳴で、世界がゆれたのです。


「アウト」


 世界に静寂が戻り、広場に立っているのは私とサリーさんだけ。

 周りにはもと人だった、炭のようなものが累々と転がっています。


 死の静寂の中、こわごわと家々の窓から、女たちが覗いているのが分かりました。

 私はサリーさんを見つめました。


 サリーさんは頷いて、すごく大きな声で、

「この村の長の身内の者よ、いでよ」

 一軒の家から女性が出てきました、すごく怯えているようですが、しかたないかもしれませんね。


「私はこの村の村長の妻です、何か御用でしょうか?」

「私たちは、やむをえず巻き込まれ、このような事態となったが、皆に迷惑を掛けるつもりはない」


「しかし、こうなった以上ここにはいられない、私たちは旅立つが、後の始末はよろしくたのむ」

「ご苦労だが、宿の者の身内を呼んでもらいたい」

 村長の妻は、同じような中年の女性を連れてきました。


「我らの食事代と修理代はこれで足りるか?」

 とサリーさんは貨幣を差し出しました。

 宿屋の妻は首をふり、取ろうとしません。


 代わりに村長の妻が、

「村を救ってくださった女神さまから、代金などとんでもない」

「どうか今しばらく、ご滞在くださいませんか?」


 私はサリーさんに代わって言いました。

「奥様、私たちはどう思われようと構いませんが、ただ騒がしいのは避けたいのです」


 村長の妻は分かりましたといい、どこかほっとしています。

 でも代金は、宿屋の妻が何としても受け取りません。


 しかたがないので、私はずーと被っていたフードをとり「ありがとうございます」と会釈します。

 サリーさんの言葉どおり、二人の妻は固まっていました。


 村を出る時、ガルダがお礼をいった気がします。


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