臨戦態勢


 サリーさんが、スタンガンを隠し持つようにして、

「どちらさまですか?」と聞くと、宿のものですと応えましたがありましたが、サリーさんは警戒を解きません。

 慎重に少し開いて、確認してからドアを開きました。


 ドアの向こうには、幾人かの男が立っていて、各々武装しています。

 その中の受付をしていた人が、

「お客様、大変申し訳ありませんが、本日はこの部屋から出ないようにしてください」


 サリーさんが、何かあったのですか?と聞くと、

「先ほど行商人が、大きな蛇の大群に襲われました。我々は大蛇退治に行きますが、お客様におかれましては、絶対にこの部屋より、出ないようにご忠告いたします」


 そう云うと、男たちはバタバタと階段を下りて行き、村の広場へ戻りました。

 ベランダから眺めていますと、男たちが集合しています。

 私は行かなくてもよいの?


 サリーさんが、「お嬢様はもう立派な女性ですよ、大体ベランダに出るなんて、はしたない行為です!」とたしなめられます。

 サリーさん、私の思考を読めるようになったの?


 男たちが手に手に武器を持って、蛇退治に行きますと、あれだけ騒がしかった村の広場が、急に静かになりましたが……

 なんか落ち着かない、嫌な予感がします。


 私はサリーさんに、例の警杖型スタンガンを取り出してもらい、カーテンを外してロープとし、襷掛けをして臨戦態勢……


 サリーさんも私につられたのか、「お嬢様、勇ましいですわ。」とか云いながら、これまた例のとんでもないエアライフルを手にしています。

 いつの間にか襷掛けなどして、私などより、もっと勇ましい姿ですよ。


「サリー、私たちがここへ来るまで、何か異変がありましたか?私は感じませんでした」

「大蛇の大群が出たということですが、そんな大蛇の大群なんて、余程のことがなければ出ないでしょう」


「いまここには、小さな動物たちがのんびりと、ひなたぼっこをしています。蛇の大群が身近にいれば、このような動物は少なくともそわそわするでしょう、取り越し苦労なら良いのですが」


 そのとき、ビシと音が聞こえ、窓枠に矢が突き刺さりました。

「お嬢様、ビンゴです」

 そうですね……


「お嬢様、男はみんな村の外です」

「戦うしかないですね」

 私は覚悟を決めました。


 身体の底から、次から次へと、戦う力が湧き上がって来ます。

 警杖型スタンガンの使い方が自然と分かります。

「行きましょう」

 サリーさんが「お供します」と云いました。


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