ガルダ村の宿屋


 ガルダって?

 確かヒンディーの神話に出てくる、炎の様に光り輝き熱を発する、神鳥のことではなかったですか?


 サリーさんと村へ入っていくと、村の入り口に赤い翼の鷲が描かれていました。

 その鷲と目が合った気がします。


 村の広場では、人々が集まり騒々しい。

 サリーさんは委細構わず、広場の前にある村に一軒しかないであろう宿に入って、受付で記帳しています。


 宿泊代金は幾らか、私には分かりません。

 どこでお金を調達しているの?

 疑問が湧いてきます。


 お金を支払うのに、貨幣を一枚一枚、板の上に置いています。

 板には貨幣大の窪みがあり、そこに貨幣を嵌めているようです。

 所によって、勘定のしかたは色々なのだと思いました。


 サリーさんが「お嬢様、行きましょう」と云ったので、私は無言で頷いて、後をついて行きました。


 宿は木造の二階建て、私たちの部屋は二階の端、屋根が切妻となっていたおかげで、天井の高い部屋でした。

 お風呂へ行こうとすると、「ここでは風呂はありません、行水だけです」、サリーさんが部屋の隅を指さします。

 タライらしきものが置いてありました。


 湯はどうするの?

 聞く前に、サリーさんが呼び鈴を鳴らしました。

 するとボブカットをした、十歳ぐらいの少女が来て、「お呼びですか?」と尋ねます。

 サリーさんがタライを指さして「湯を」というと、頷いて出て行きました。


「お嬢様、今日は一歩もここを出ないでください、たとえトイレでもです」

「でもおトイレはどうするの?」と聞くと、タライの横を指さします。

 見ると『おまる』がありました。


 サリーさんが決定的なことをいっています。

「用を足したら、このタライの水で洗ってください」

「汚物は先ほどの呼び鈴を鳴らすことになります、恥ずかしいことはありませんよ、昨夜さんざん教えて差し上げましたよ」


 少女が三人ばかりで、大きなタライに湯を張ってくれました。

 私は恥ずかしかったのですが、諦めて行水をしています。

 散々裸をみられているのでね……


 サリーさんが背中を洗ってくれながら、

「お嬢様、お疲れ様です」と云ってくれます。

 私が済むと、サリーさんも裸になり入浴したので、私もサリーさんの背中を洗うことにしました。

「サリーお疲れ様」と言いながらね。


 入浴が終わって一息していると、少女たちが遅い昼食を持ってきました。

 硬いパンのようなものと、何かのフルーツのジュースと目玉焼きですが、黄身が大きいです。

 なんの卵だろう?

 しかし聞くのはやめました、食べてからにしましょう。


 村の広場の喧騒がますます大きくなり、ここまで聞こえてきます。

 ドタバタと、階段をだれかが上がってきて、ドアをノックしました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る