レクチャー

 夜もふけてきたので、取りあえず火をそのままに寝ることにした。

 本当に大丈夫なのだろうか?


 そのことをサリーさんに聞いて見ると、サリーさんは小さいカバンから、とんでもないものを取り出して、目の前に差し出した。


「私はお嬢様を守るため、このようなものを頂いています」

 差し出されたものは、狩猟用のエアガンである。


 見るとブリチャード式で、いくらエアガンといえど、女性で取り扱うのは難しい代物である。

 さらにいうなら、いくらブリチャード式といえども、ここは地球ではない、確固たる殺傷能力が必要な世界ではなかろうか。


 大体、奴隷制度が残る古代ローマ並みの時代と聞いている。

 私がそれを見ていると、サリーさんが「あの岩をご覧になっていてください」といい、五十メートルほど先にある岩を指し示しエアガンを構える。


「アーマーイン!」サリーさんが掛け声をかけた。


 エアガンに、赤い光が纏いついたかと思った瞬間、プシュと音がして、標的の岩が砕けた。


「アウト」といってサリーさんが銃を下ろした。

 もうこれはエアガンなどという代物ではない、ライフル銃、いや迫撃砲だ。


「私はこれを取り扱うために、二年間練習いたしました、私はお嬢様をお守りするためにも、存在するのです」


 私はサリーさんに聞いて見ることにした。

「これが魔法というものですか?」


 サリーさんの答えは、

「魔法ではありますが特殊な魔法です、だれ彼できるものではありません」

「この武器はだれでもさわれますが、決められた人間しか先ほどの威力を出すことはできません」


「私も詳しくは教えられていませんが、『よりしろ』という魔法だそうです。もちろんお嬢様の杖もそうです」

「私にはその杖は扱えませんが、お嬢様はすべてを扱えます」


 私は考えてしまった。

 ここへ私を連れてきたもの達は、私にこの世界を何とかしろと云っている、私にはその責任があると、姉さえもまきこんでである。

 そして、このサリーさんである。

 否応なしなのか、ため息をつくと、サリーさんが悲しそうな顔をした。


「お嬢様がため息をつかれると、私は悲しくなります」

 サリーさん……そうですね、私はこの世界に責任があるらしいが、サリーさんに対しても責任がある。


 気を取り直して寝ることにしよう。

 でも寝具はどうしよう、寝袋でも出してもらいましょうか。


 と考えていると、サリーさんの爆弾発言があった。

「お嬢様、ご一緒に寝ましょう、夜は寒いですわ、互いに抱き合えば温まれますよ、それにお嬢様に女についてレクチャーの機会ですから」


 私がその提案に戸惑っていると、

「お嬢様、先ほどのお言葉をお忘れですか」

 女についてレクチャー???


 サリーさんのレクチャーはすごく情熱的で、私はされるがままになってしまった。

 勿論、用足しなども、サリーさんにしっかりと教え込まれたことは、いうまでもない……

 

 こうしてエラムでの第一日は、羞恥心とともに過ぎ去っていった。

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