侍女サリー

 私はこの手紙を読んで、すぐには理解できなかった。

 あまりに荒唐無稽なこの文章だが、しかし笑えない事実を突き付けている。


 たしかに書かれてあることは、理解に苦しむが、この廻りの植物は見たことがない。

 鬱蒼とした森の中の、このぽっかり開いた空間は、よくテレビのアマゾンの中継などで見たことがある。


 とにかく私には、待つことしかなさそうだ。

 女である私が、この森の中を抜けられるとは思えない。

 しかもセーラー服である、いくら機能的でも、このジャングルのような森では無力であろう。


 でもおかしなことに気がついた。

 藪蚊が来ない、このような森では、何らかの虫が飛んで来るのではないのか?


 この手紙では、このフィールドからでるなとある。

 ヒョットしてこの中だから、虫などが来ないのか?


 とにかく私のいる所は、リスクの高い場所と思われる。

 このまま待つほうが、安全と考えられるので、私は待つことにした。


 小一時間ほど周りの景色を眺めている。

 鳥や獣、それこそ虫さえ見えない。

 見上げれば、空に浮かぶ雲は地球と同じである。


 と、祭壇の前の空間が開いた、そう、おかしな表現だが、こう表現するしかない。


 そこから女性が出てきた。

 黒のシンプルなワンピースで、袖に白線があり、衿は白く、まるでホテルのレストランにいる、上品なウェイトレスの格好をしていた。


 ものすごく美しい人で、凛とした感じがあり、清楚な感じがその服装と相まって、なんともすがすがしい雰囲気をかもし出している。

 そして私の前まで来ると、両膝をつき両手を前に差し出し、「遅くなり申し訳ありません、ご主人様」と云った。


 私は慌てた、ご主人様ってだれよ、私は何者よ、たとえ手紙の通り、この目の前の女性が、私の奴隷といわれても、俄かには信じがたい。


 そこで私は、「お手をお上げください、そこでは服が汚れます、どうぞこちらへお座りください」と、私が座っている祭壇を指し示した。


 女性は首を振って云った。

「私は貴女様の奴隷です、奴隷がご主人様の横へ座ることは許されません」

「どうぞ遅れてきたことの罰を、お与えください、いまお持ちの棒で、私をお打ちください」


 私は少し腹がたち、また悲しくなった。そこで、

「あなたが私の奴隷というなら、私は命令します、私の横へお座りなさい」


 その女性は少し困った風ではあったが、覚悟したのか、私の横へおずおずと座った。


「私はサリーと申します、どのようなことでもご命令ください、ご主人様」


 命令といわれても、私は今の状況が分からないし……

 あれ! この人はここに来る前に出会った人では?


「サリーさん、先ほど出会いましたか?」

「はい、ご主人様」


 この人は、今の私の状況を把握しているはずだ。

 私の手元にある手紙は、本当なのだ。


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