神話

 遥かな昔、女神が世界を創られたとき、女神に命ぜられた使いの人々がこの世界に移り住んだ。


 人々はこの世界で繁栄し、その友として、さらに我々を作り出した。

 その後、人々は女神の指示により、新たな世界のために、この地を我々に譲り、別の世界に去った。


 しかし一部の人々は、女神の指示に不満をもって、我らを辱め、我らを困らせた。

 我らは人々の長老に訴え、女神に奏上していただき、女神のお力をもって、この難をのがれた。


 このとき、一部の人々は、あまりの不満になかなか従わなかったが、長老の英知の裁定と、女神の慈悲とに心打たれ、おとなしく従うことになった。


 長老は我らのために、女神に次のように奏上された。



 彼らもその己が力で、独り立ちできるまでは、試練が必要でしょう。

 なんの努力もせずに、世界を与えることに、我らの一部が異議を唱えたのでしょう。

 人は自らの力で世界に立たねば、堕落するばかりです。


 親が子に与えるささやかな試練も、大いなる慈悲ではないでしょうか?

 どうか彼らが、このささやかな試練を乗り越えたとき、この世界の主人とし、女神の祝福をお与えください。



 女神は長老の言葉に深く頷き、彼らに向かっておっしゃいました。



 すべて使いの人々よ。

 長老の言葉は、まさに厳しくも優しい父の言葉である。

 父親の子を思う気持ちに、私は心打たれた。

 この場にいるすべての人々よ、思いは同じと思う。



 一部の人々も頭をたれて、女神と長老に従った。


 さらに我らに向かっても、お言葉を掛けてくださった。



 年若く力ない、あなた達を思う長老の言葉は、父の言葉です。

 私は女神として誓いましょう。


 時が満ちれば、

 乙女を遣わしましょう。

 黒き瞳と黒き髪、

 正しきに会えば、慈悲の乙女、

 悪しきに会えば、英断の乙女、

 黒の巫女現れるとき、

 父なる長老の慈愛が実りましょう。



 我らは、女神と長老と使いの人々に、声高く誓った。



 我らは試練に打ち勝ち、正しい人となりて、黒の巫女を迎え奉じ、この約束の大地の主人となれり。



 長老は特に喜ばれ、自ら我らを呼ばれ、こう囁かれた。



 黒の巫女は我らとは別の人である。

 我らにとっても仰ぎ見る人で、この人を遣わしていただくとは、あなた達は女神に愛されている結果である。


 黒の巫女が『慈悲』か『英断』かは、あなた達次第である。

 もし『英断』の巫女を遣わされた場合、特に心改めるように。

 女神のご意思を、くれぐれも大事にするように。



 そして長老は女神から授かっていた、力の一部を我らに分けてくれた。

 こうして、失われたレムリアの物語が始まった。


 しかし先祖は、そのときをまてなく、争いを繰り返し、滅亡の手前まできて、長老の言葉を思い出した。


 先祖は残り少ない子らに、この神話を碑に刻み、長老から引き継いだ、神からの力を子らに残した。

 ただ過ちを繰り返さぬために、引き継いだ力の大部分を封印して。


 そして残される子らに、こう言い残した。



 女神からの黒き乙女、黒の巫女が現れるとき、頭をたれてお迎えせよ。

 心改め、我らの過ちを繰り返すな。



 数え切れぬ時が繰り返され、残された子らはキンメリアと称し、父なるレムリアの言葉を守り、黒の巫女が遣わされる、そのときのため神殿を建て、キンメリアの誓いを捧げている。

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