たまに甘えられるのは親として嬉しいんだよ

 妹ねぇ。

「パパ……」

 性別がわかるということはある程度の妊娠期ということで。

「隠してたんだ」

「恵憂、そんな冷たい声出さなくても……」

「私だってどうやったら子供できるか知ってるけど……。これは計画妊娠なの?」

 ママが深いため息をふわぁぁと吐き出して不機嫌になった

「子供が「計画妊娠」なんて言葉言わないでほしいわ。

我が娘ながらかわいげがないわねぇ」

「まぁおめでたい話だし。姉妹仲良くします!」

 私の感性では妹ができることにさしたる意味を感じていなかった。生まれるまでは。


 母子ともに健康で、なんの問題も発生しないまま予定日より3日前に、妹=みうが産まれて、初めて感じた『愛おしい』って気持ち。愛おしいという気持ちが夜泣きとか、おむつ交換とかその他諸々許せる? 違う。施す? 違う。愛の形なんだ。パパもママもももちろん大好きだ。みうにどう接していればいいのか分からなかった。なのに予想とは全然違う。みうは「ねー」「ねー」と繰り返して、私も「みー」「み-」とその言葉にきちんと返事する。

 正直、めんどくさいことしかないと思っていた。なのに楽しかった。

「みうって名前って綺麗で美しいイメージだよね?」

 私のあんまり聞きたくなかった疑問。でも理系は疑問があれば

「まぁママがそういう意味を込めたんだって」

「私の名前は? 『憂』ってマイナスなイメージだけど……」

 パパはぱふっと抱きしめてきて

「大丈夫、祝福されて産まれてきんだよ。

『憂』っていうのはね、パパが好きな言葉なんだ。転じて福となすって意味のつもり。

実はママは大反対したけど、顔を見た瞬間思いついたし珍しくこだわったパパの意見を聞いてくれたんだ。

だからパパは恵憂の味方なんだよ」


 その日珍しく、私はパパのベッドで、ママは私の部屋のベッドで一日を終えた。

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