恵憂が踏み出すプロローグ

パパとママがイチャイチャした結果

 毎日、朝の6時に起きる。これは習慣だ。ママ曰く「毎日同じ起きる時間を決める習慣は寝不足でも頭の回転が鈍くなりづらいのよ」と言っていたのでそれに従っている。確かにそれを習慣にしてから、朝起きたときのだるさが感じづらくなった。

 リビングに行くとママが朝ごはん作っている。たいていカリカリベーコンと目玉焼き、季節の果物、サラダというラインナップである。ママの作るご飯は身内びいきなしに美味しい。

「恵憂、おはよう」

「おはよう、ママ」

「パパ起こしてきてね」

 すでにベーコンの焼けたいい香りがリビングまで届いている。それを胸いっぱいに吸い込んでパパとママの部屋に行った。

 毎朝パパを起こすのは私の仕事。パパは朝が苦手らしく起こされないと起きない。それを「なんで?」って聞いたら、またいつもののろけ話になり……。あーはいはい。ママが起こしてたのね。

 家族揃って朝ごはんを食べながら、いつもの話題になる。パパは仕事で何時頃帰ってくる。ママは何時頃に帰ってくる。つまるところみんなの予定を把握することだ。もちろんそれだけが話題の冷めた家庭ではないけど。まぁ普通の家族がするごく一般的な会話だ。

 でも

「恵憂。今日は大事な話があるから19時までには家に帰ってきてね」


 これが超弩級の話だとは思わなかった。その時までは。


 そして19時。まぁ特に予定がなかったので英語のリスニングの勉強をしていたらノックの音がして、ドアを開けるとパパが立っていた。

 なんだろう。いつものパパじゃない。緊張しているような怖がっているような。

「恵憂、時間だからリビングまで来てね」

そう言ってパパは少し足音を早めて階段を降りて行った。


 さてこれはどういうことだろう。ママも緊張? のような感じだ。

 なにか悪いことしたかな? なんて考えながらいつも通りママの横に座った。

 リビングにはパパとママが机を挟んで向かい合うように座っている。

 そしてなにより静かだ。いつもみたいにパパとママがイチャイチャしてないし……。


 ふぅーっと息を吐き出したママが言った。


 「恵憂。妹できちゃった」

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