お嫁さんを怒らせてしまった事由

この発端は、いつも通りの会話だった。

 私たちには両親がいない。そしてスマホも持ってない。当然だ。未成年は契約できないのだから。

「このまえ、大学の女の子に「スマホ」持ってないの! 逆にすごーいって笑われちゃってさ」

 だんな様はへらへら笑っている。大丈夫。いくら私の前で、他の女の子の話をされても怒らない。

「結婚してるって話をしたらさ。「かっこいいのにもったいなーい」って笑われちゃったよ」

 ムカムカしてきた。そうか。他の女の子から見てもかっこいいのか。

「浮気とか考えたことある? って聞かれちゃって。反応に困ったよ」

 ぶちっと頭の中で堪忍袋が破裂したのがわかった。

「だんな様。ちょっとこっちきて」

 ソファの方に来させる。そのまま足を思いっきり蹴っ飛ばした。痛かったのだろう。

「ちょっ。あーたんどうしたの」

足を抱えるようにして体を丸めた。そのまま頭を踏みつける。

「なんであーたんそんなに怒ってるの!?」

「かっこいいのにもったいないのね。私と結婚してるのにもったいないのね」

「いや、それは女の子の意見で」

「反論したの?」

「……」

 さらに強く頭を踏みつける。

「もったいないって思ってるのね?」

「思ってないよ!」

「でも反論はしないんだ。どうせスマホ持ってたら山程女の子とLINEの交換するんでしょうね」

「でも僕はあーたん一筋だよ!」

「ふん。そんなこと言って、もっとかわいい女の子見つけたらそっちに行くくせに」

 言ってて胸が痛くなった。だんな様がいなくなる。そんな事になったらきっと心が耐えられないだろう。

「証拠じゃないけど」

いつの間にか踏まれてた頭をあげて


 優しくキスされた。


 それだけで許しちゃうんだから、だから8年間も想っていたのだろう。

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