勇者
ユウスケ達はネフィアに案内されて、王座の前まで進んで行く。
「お父様、お連れしました。こちらの方々が勇者の皆様です」
ネフィアに促され、順番に自己紹介していく。
「スドウ・マサヨシです」
「スズキ・フウカです」
「イジュウイン・アヤと申します」
「タツミヤ・スイレンだ」
「フジキ・ユウスケです」
生まれながらの茶髪の高身長イケメン、マサヨシ。
ちっこくて可愛らしい妹キャラのフウカ。
眼鏡をかけ、出来る秘書のようだが、どこか気品あるアヤ。
スレンダーで引き締まった体つきをした、鋭い印象がするスイレン。
そして、どこにでもいるような、黒髪黒目の中肉中背のユウスケ。
ある意味、平凡すぎるユウスケは、この四人の中で目立っていた。
「うむ。我がこの国の国王、アレキサンドリア・デフォン・ラストアである」
王はマサヨシに視線を定めて語り始めた。
マサヨシがこの四人の中でリーダーだと考えたのだろう。
「そなたらは勇者として召喚された者たちだ。だが、いきなり勇者と言われても訳が分からんだろう。だから順路立てて説明していくとしよう。まず、ここはそなたらがいた世界ではない。別の世界だ。そなたらは異世界人という事になる」
「異世界!?」
「そんな!?」
「まさか?」
「別の世界だと……?」
「うむ。そなたらの驚きも分かるが、これは事実なのだ。ある時王城に隠し部屋が見つかった。その部屋の床には精巧な魔法陣が描かれており、一冊の本が置いてあった。その本によれば、光属性の魔術師を多数揃え、本に書かれた秘伝の高位魔術を使う事で、一度だけ異世界から勇者を召喚できると書いてあった。その魔術により召喚されたのがそなたらという訳だ」
マサヨシ達はあまりの事に絶句している。
だが、ユウスケは内心自分の予想通りだと納得していた。
「そして、そなたらを召喚した理由だが、我が国を救って貰いたいのだ。我が国は今窮地に立たされている。北の地はドワーフに脅かされ、南の地は獣人の脅威に晒されている。東は隣国が幾たびも侵略してくる。更に西の地の先には魔族と呼ばれる者たちが巣くう。この状況を打開出来るのは、そなたら、勇者だけなのだ」
「そんな……」
王の説明を、マサヨシ達は信じたようだが、ユウスケは非常に疑わしいと思っていた。
そんなに窮地に立たされているなら、もっと必死さが伝わってくるだろうし、贅沢する余裕もないはずだからだ。
どう考えても怪しい。
ユウスケは、この後の展開を予想しながら、どうしたら王国の駒とならないで済むかを考えていた。
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