珍品

「ではこちらのアイテムバッグは預からせて頂きます。」


 オークションに自作のアイテムバッグを出品する事に決めたおれは、エリスに素材袋を手渡す。

 そういえば、これは失敗作だから、一応注意しておくべきだろう。


「エリス、このアイテムバッグはちょっと変わっていてな、手を入れて取り出すことが出来ない」


「え……それはどういう事でしょうか」


「さっおれがやったみたいに、ひっくり返さないと物が出てこないんだ。だから取り出すときは一度に全ての物が出てくる」


 なんだか間抜けな魔道具だよな。

 次に作る時は、袋の中身を拡張しないようにしよう。


「そして、普通のアイテムバッグは生き物は収納しないらしいが、このアイテムバッグは生き物でも収納してしまうだろうから注意してくれ。おそらく、物を入れるときに深く手を突っ込みすぎると、その人間は吸い込まれてしまう」


「そ、それは……!? こちらのアイテムバッグは呪いの品だったのですか!? ですがそれなら解呪すれば……」


 呪いではないが、この世界の住人の常識からしたらそう思えてしまうのだろう。


「呪いではないが……なんというか、元々そういう品なんだ。まぁ、よっぽど深く突っ込まないと吸い込まれる事はないだろうから、大丈夫だ。こんな品だが、売れるだろうか……?」


 自分で言っていてなんだか不安になってきた。

 こんな不良の魔道具を買う人間なんているのだろうか?


「呪いではないのですか。それなら解呪は出来ませんね。ですが、オークションに関してはおそらく大丈夫でしょう。いえ、変わったアイテムバッグという事で、逆に高値で落札されるかもしれません。そのあたりはギルドにまかせてください」


 そうか、逆に珍しいからと価格が上がる事があるのか。

 まぁ、どの世界にでも好事家という者はいるものだしな。

 きっとギルドが上手くやってくれるだろう。


「あぁ、任せた。それでオークションはいつ頃になるんだ?」


「はい。ちょうど明後日商業ギルド主催のオークションが開かれる予定なので、急ですが、そこにねじ込みます。アイテムバッグ程の品なら十分許可を貰えるでしょう。」


「そうか。ユースケ、すまないが迷宮都市へ行く話は後になりそうだ。」


 確か一緒に行こうと誘われていたからな。


「あぁ、別に構わねぇよ。サンドリザードの素材の換金もまだだしな。それよりかそのオークション、おれも参加出来ないか?」


 オークションに参加か。

 確かに面白そうだ。

 掘り出し物があるかもしれないしな。

 金ならアイテムバッグの落札額から引いてもらえばなんとかなるだろう。


「エリス、どうだ?」


「本来ならユースケさんの参加は難しい所ですが、アルさんの付き添いという形なら参加出来るでしょう」


「そっか。なぁ、アル、一緒に行こうぜオークション?」


「あぁ、面白そうだし参加してみるか。自分が出品したものがどういう風に落札されるかも気になるしな」


 という訳で、おれとユースケのオークション参加が決まった。

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