異変
おれは受付嬢のエリスに、ゴブリンマジシャンについて尋ねられていた。
「詳しくといっても、四匹のゴブリンに守られながら魔法を放ってきたとかそういう事ぐらいしか言えないのだが……」
「いえ、あの、そういう事ではなく、他にも特殊個体のゴブリンを見かけたり、何か異変に気付いたりしませんでしたか?」
「んー、そう言われても、おれは今日初めてゴブリンを見た駆け出しだし、特に変なことは思い当たらないな」
「そうですか。すいません、変なことをお聞きして」
「いや、こっちこそ力になれなくてすまん。それで、なにか異変に思い当たるのか?」
ここまで気にするぐらいだし、なにかあるのだろう。
「はい……。ここ最近は森の外の草原でゴブリンがあまり見かけられませんでした。それだけなら良い事ですが、ゴブリンマジシャンなどの特殊個体が森の中で発生しているとなると、上位種が誕生している可能性があります。上位種は知性を持ち、群れの統率に優れ、まずは力を蓄えます。そして……」
「森から出て一斉に攻めてくる、か」
「はい……。これは、森の探索の依頼を出した方がいいかもしれませんね。ギルドマスターに相談して、三等級以上の方へ依頼を出す事になると思います。アルさんもなるべく南の森へは近づかないようにしてください」
そう言われても金を稼ぐ為には狩りにいかないといけないのだが。
「まぁ、一応心に留めておくよ」
「その返事は行くつもりですね。ですが強制は出来ませんし、出来るだけ森の中には入らないようにしてくださいね」
「あぁ。それで、依頼達成の報酬はどうなってる?」
「あ、すいません、そうでした。ゴブリン討伐の依頼料として、九匹分のゴブリンとゴブリンマジシャンで大銀貨一枚と銀貨九枚となります。内訳はゴブリン一匹銀貨一枚、ゴブリンマジシャンが大銀貨一枚となります。素材も換金しますか?」
「頼む」
「では、ゴブリンの魔石が九匹分で大銅貨九枚、ゴブリンマジシャンの魔石が大銅貨三枚と銅貨五枚、角が十本で大銅貨五枚、ゴブリンマジシャンの杖は鑑定しないといけないので後日となりますが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、それで頼む」
ゴブリンの魔石が一匹分で大銅貨一枚、角は銅貨五枚か。
駆け出しの冒険者でも、安宿に泊まれば一日ゴブリン六匹狩ればギリギリ生活出来るぐらいか。
そしておれの本日の稼ぎはゴブリンマジシャンの杖を抜いて大銀貨約二枚程か。
これならなんとかやっていけるだろうが、早く上のランクに上がらないと金は貯まりそうにないな。
ゴブリンマジシャンの杖には期待だが、明日はオークに挑戦してみるか。
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