違約金

「依頼失敗には違約金があるのか?」


 一応確認しておくべきだろう。


「はい。ですが全ての依頼に違約金がある訳ではありません。護衛任務や指定の素材の入手など、主に外部からの依頼には違約金がありますが、五等級の小鬼ゴブリンの討伐や一般的な薬草の採取、四等級のオークの討伐などの常時依頼には違約金がありません」


「なぜ違約金があるのとないのがあるんだ?」


「それはですね、外部からの依頼となると護衛の人数や素材の指定数が限られているからです。多くの冒険者が同時に受けて人数が溢れて揉めたり、せっかく素材を手に入れたのに報酬が貰えないといった状況を回避するため、そういったクエストは最初に受注した人の仕事となります。護衛で人数がいる場合は規定数に達するまでですね。ですからその分受注された冒険者の方にも責任が発生して、失敗した時に違約金が発生する訳です」


 実力不足の者が依頼を受けて、依頼失敗してギルドは知りませんじゃ信用という点ですまないから、冒険者自身に責任を持たせ、自分の実力に合った依頼を受けさせているという事だな。

 この分だと違約金は額がデカそうだ。

 損失に見合った違約金を依頼者に払うだろうからな。


「常時依頼は放っておくとどこまでも増えるゴブリン、ポーションの原料となる薬草、肉が食用として利用されているオークなど、いくらでも必要とされている依頼となります。こういったものは、同時に何人もの冒険者の方が依頼を受けることが出来ます。失敗しても特に損失は発生しないので、違約金はありません。違約金のある依頼は、失敗して借金を背負ったり、酷い時には奴隷に落ちたりするので、最初のうちは常時依頼でご自分の実力を計っていくのがお勧めです。と言っても、五等級の依頼には大きな違約金が発生するものはありませんが」


「なるほど。奴隷になんてなりたくないからな。気を付けるよ」


「はい。そう心がけるのがよろしいかと。あと依頼は自分のランク以下のものまでしか受ける事は出来ませんが、有益な素材の買取などはランクに関わらず行っているので、後で資料室にある"解体と素材"という本に目を通しておくのがよろしいかと」


「分かった。あとで読んでみるよ。それとどこかお勧めの宿はあるかい?」


「どういった宿をお求めで?」


「そうだな。大銀貨一枚以下で、出来れば一人部屋で清潔感があって、飯が美味いとこがいいな」


 おそらく駆け出しの冒険者としては贅沢なんだろうが、今のとこ金はあるしな。

 それにいつまでも駆け出しでいるつもりはない。

 早くランクを上げて金を稼ぐつもりだ。


「それでしたら"鈴なり亭"がよいかと。ここからまっすぐ大通りを城の方へ進むと、鈴の絵の看板がありますのでそこが鈴なり亭です」


「分かった。ありがとう。行ってみるよ」


 親切な受付嬢に礼を告げておれは冒険者ギルドをあとにした。

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