買い物

 冒険者ギルドを出たおれは、受付嬢が言っていた通りに、大通りをラース城に向けて歩いていく。

 途中、武器屋があったので覗いてみたが、親父殿から貰った剣より良い物はなさそうだ。

 まぁ、そんなものがあったとしても、とてもじゃないが買えないが。

 剥ぎ取り用によさそうなナイフが大銀貨一枚半であったので、購入しておく。


「店主よ、防具はないのか?」


「うちは武器屋だ。防具なら向かいの店に行きな」


 そう言われたので通りを挟んだ向かいに行くと、確かに防具屋があった。

 鉄の鎧やなんの素材か分からないが頑丈そうな鎧が置いてあるが、おれが欲しいのは軽くて丈夫な革鎧だ。


「すまん、軽くて動きが阻害されない防具が欲しいのだが、お勧めはどれだろうか」


 そう告げると店主はおれの体を上から下までじろっと見つめ、ニヤニヤした気持ち悪い笑みを浮かべた。


「それでしたらこちらのワイバーンの鎧などいかがです坊ちゃん? 今なら大金貨三枚でお譲りしますよ」


 おそらく、おれの身なり、そして精巧な装飾がしてある剣の鞘を見て金持ちの坊ちゃんだと考えたのだろう。

 だがあいにくおれはそんな大金は持ってない。


「流石にそんな大金持ってはいないな。金貨一枚以下で頼む」


 そう告げるとどこか鼻じらんだ様子で革鎧を手に持ってくる。


「それならこの戦狼ウォーウルフの革鎧てとこだな。大銀貨七枚半だ」


「よし、それを貰おう」


「まいどあり」


 防具店で革鎧をおれの体形に合わせて微調整してもらい、店を出て宿へ向かう。

 鈴なり亭は冒険者ギルドからそう離れていない所にあった。

 中へ入ってみると一階は食堂になっているようで、何人かの客がいた。


「ふむ。小奇麗で悪くないな。飯も美味そうだ」


「いらっしゃい! 食事かい? お泊りかい?」


 店の奥から恰幅の良い三十代程の女性が出てきてそう尋ねる。


「泊りだ。一人部屋に空きはあるか?」


「あいよ。泊りだね。一人部屋は夕食と朝食が付いて銀貨八枚さね」


「分かった。取り合えず十日分頼む」


「了解。大銀貨八枚だけど、長期のお客さんってことで特別に大銀貨七枚と銀貨五枚でいいよ。部屋は二階の一番奥が開いてるよ。これが鍵だよ。うちの店を出る時には鍵は預けていって頂戴ね」


「ありがとう。荷物を置いたら飯を食いたいんだが、もう夕食は食べれるか?」


「大丈夫だよ。注文する時には私に言っておいで。追加注文は別料金だから気を付けるんだよ」


 おれは荷物を部屋に置いてから夕食をとった。

 パンに肉が入ったシチューというシンプルなメニューだったが、美味しかったので追加で大銅貨八枚を払ってシチューをお替りした。

 これで残りは金貨一枚に大銀貨二枚と銀貨四枚、大銅貨二枚だ。

 防具など高価な買い物があったからだが、早くも残金が半分以下だ。

 明日から頑張らないとなと決意を新たに、おれはベッドで眠りについた。

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