ランク

「それで、登録の方は済んだのか?」


「はい! 登録は完了しました。こちらをお持ちください」


 そう言って渡されたのは、冒険者ギルドの看板と同じ刻印がしてある木製のメダルと、木製の空洞の枠が付いた紐のペンダントだった。


「こちらは冒険者の証となります。そのペンダントに嵌めて首からぶら下げる事も出来ます。再発行には大銀貨一枚掛かりますので、失くさないでくださいね」


 ほう。これが冒険者証か。


「詳しいご説明は必要でしょうか?」


「頼む」


「では、まずそちらの冒険者証ですが、駆け出しの五等級から頂点の一等級まで、ランクが上がるごとに木製、鉄製、銅製、銀製、金製と変わっていきます」


 だからペンダントと外せるようになっているのか。

 ランクが上がる度に交換していくのだろう。

 もっとも、魔法使いのおれとしては二等級、つまり銀のメダルの銀等級の時は付けておく訳にはいかないが。


「ですのでペンダントにしている場合、自分の等級を晒すという意味合いもあります。あ、ペンダント自体は別の物にしてもらっても構わないので、上の等級の人は銀や金で作り直しているようです」


 なるほど。

 枠を凝った装飾にしたり、チェーンの素材を変えることでオシャレアイテムにもなるって事か。

 おれにしてみれば銀のチェーンなんてとんでもないが。


「それで肝心のランクについてですが、それぞれランク毎に一定の強さの魔物の素材を複数ギルドへ納める事でランクアップします。五等級から四等級になるには豚鬼オークなどですね。一度に複数でも、何度かに分けてもらっても大丈夫です」


「すまないが質問いいだろうか。仮に五等級の人間が三等級へ上がる為の魔物を狩ってきた場合どうなる?」


「その場合は三等級へ一気に上がれます。もちろんまぐれじゃない証明として複数納める必要がありますが」


「なるほど。じゃあ仮に他の冒険者が狩りを手伝ったり、金で頼んで狩ってきて貰った場合はどうなるんだ?」


「その場合でも規定数を納められたらランクアップします。ですが、そのような方は結局自分の実力が等級に足りず、怪我をされたり死んでしまったりするのでお勧め出来ませんね。また、クエストを連続で失敗して、結局元のランクに戻ったりします。依頼失敗の違約金付きで」


 依頼失敗には違約金があるのか。

 つまりギルドからしてみれば、助けを借りたり、金の力でもなんでもいいから依頼を成功させればよし。

 依頼に失敗しても、違約金を取れるからよし。

 自分の実力に合ってないやつは、結局ランクが元に戻るから、依頼失敗が続かずよしという事か。

 よく考えられたシステムだな。

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