属性

「よしアル、これから魔術を教えるぞ。まずは生活魔術からだ」


「おう!」


 ようやくこの日がきた。

 おれがどれだけ魔術を教わるのを待ち望んでいたことか。


「生活魔術といっても色々ある。アル、お前はどのくらい知っている?」


「火種を出したり、水を生み出すくらいかな?」


「そうだな、確かに火属性の生活魔術は火種、水属性の生活魔術は水を生み出したりする。他には風属性の微風を発生させたり、土属性の農地に適した土に改良する魔術がある」


 やはり生活魔法では大したことはできないんだな。

 それでも誰でも使えるとなると便利なのだろう。

 火種は料理や灯りに、水も料理や洗濯に、畑の水まきに。

 微風は微妙だが夏場には重宝しそうだし、うまくやれば掃除にも使えそうだ。

 土属性の生活魔術なんか農家にしたらありがたいだろう。

 それにしても、属性とはなんだ?


「親父殿、属性とはなんなんだ?」


「お、そこからか。この世には六つの属性がある。火、水、土、風、そして光と闇だ」


 なんだそれ?

 魔法には属性なんてものはないぞ?


「水属性は火に強く、土属性は水属性に強い。風属性は土属性に強く、火属性は風属性に強い。光属性とと闇属性はお互いに強い」


 なんなんだ? どういうことだ?


「その、なんというか、なんで火属性は風属性に強かったり、光属性とと闇属性はお互いに強かったりするんだ?」


「うむ。なんでと言われてもそういうもんだとしか言えんのだが。昔の有名な学者が言うには、水は火を消し、土は水を防ぎ、風は土を削り、火は風で強くなり、光と闇はお互いを侵食するからだとのことだ。まぁ、仮説なんだそうだが」


 なんじゃそりゃ。

 火だって強ければ水を蒸発させるし、水だって土というか岩を削る。土は風を防ぐし、風は火を消す。

 光と闇なんてある意味一体の事象じゃないか。

 その仮説というか、属性とやらがおかしいと思うのは俺だけか?

 親父殿の反応を見る限り、特に違和感を抱いているようには見えないし、この世界の人間は"そういうもの"だと納得してるのかもしれない。

 なんせ皆魔術を使えて、実際に相性やらがあるんだろうからな。

 もしかするとこの世界ではそれが理なのかもしれない。

 前世の記憶を持つおれからすると違和感がすごいが。


「ところで、光と闇の生活魔術は教えてくれないのか?」


「あー、光と闇には初級魔術からしかない。更に言っておくと光と闇は適性を持つものが少ない」


「適性?」


 属性の次は適正か。

 これも魔法と違う点だな。

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