第96話 ケーキとパイ

「ケーキ♫ケーキ♫」


「香澄ちゃん、ご機嫌だね。」


「ほんとに。こんなことならおやつ買わなければよかったね。」


「えっ?甘い物は別腹じゃない?」


私の言葉に史華ちゃんとみやびちゃんが固まる。


「待って香澄ちゃん。おやつも甘いものメインで選んでたよね?」


史華ちゃんがコンビニで新作の生チョコ見つけちゃったから仕方ないよね?


「ポテチも大袋だよね?」


みやびちゃんも食べたそうにしてたよね?


「じゃあ2人とも食べない?」


「「食べる!」」


だよね。

ケーキの箱を開けると全て違う種類のものが入っていた。


「……これって適当に買ってきたわけじゃないよね?」


顔を上げ2人に視線をやると苦笑いしている。


「チーズケーキにモンブラン、フルーツタルトにガトーショコラとショートケーキにミルフィーユ。うちの家族の好みまで把握済みってちょっと引くわ。」


「総士らしいけど、雅の家族の好みまで把握してるってのはちょっとヤキモチやくよ。」


全くだよね。

たぶん私の家族の好みも把握してるだろうけどね。


私はチーズケーキ、史華ちゃんはフルーツタルト。みやびちゃんはガトーショコラを取って残りをおばさん達に持って行った。


「さてさて、ケーキをいただく前に美女3人で記念撮影して纐纈くんに送りつけますか。」


テーブルにスマホをセットしてケーキと一緒に記念撮影。史華ちゃんが写真を送るとすぐに既読がついた。

返事は一言


『太るぞ』


「ちょっと!自分で持ってたくせに!」


みやびちゃんは笑顔で文句を言いながらケーキをパクリと口に入れた。


「おいし〜!」


「だね、この時間にケーキはどうかとも思うけど今日は特別だもんね。」


史華ちゃんもかわいい口でケーキを食べている。


「ねえ史華。最近エロくなったような気がするんだけどさ〜、なんで?って聞くまでもないか。」


ニヤニヤしながらみやびちゃんは史華の顔色を伺っている。


史華ちゃんが大人の階段を登ったことはすでに聞いているし、もともとかわいい史華ちゃんが最近綺麗になったとクラスでも噂されるくらいの変化はある。


「ちょっと雅、エロくなったって失礼な。特に何も変えてないけど。」


「みやびちゃんの言い方はあれだけど確かに色気がでてきたよね。史華ちゃんに見惚れてる男子結構見るよ。」


クラスの男子の噂にもなってる『吉乃さんが綺麗になった』件。


そうちゃんと付き合っているのは公然の事実だから理由はみんな察している。男女問わず敏感になる話題だから仕方ないけどね。


「あっ!そうだ!」


「ん?どうしたの香澄ちゃん。」


「2人に相談したいことがあったんだ。」


私は綾姉に頼まれていたことを思い出した。


「2人とも綾姉の結婚式には招待されてるよね?実は二次会の幹事を冴子先輩とやる羽目になったんだけど2人にも協力してもらいたいと思って。」


「えっ?それはご愁傷様です。よりによって冴子先輩と一緒なんてね。」


「まあ、綾姉と仲良いから仕方ないけどね。

場所は冴子先輩がすでに抑えてくれてるんだけど、何をするがまだ決まってないの。だからアイデア出しを手伝って。」


私は両手を合わせてお願いをした。


「もちろん!できることは少ないけどお姉さんのためだし手伝わせてもらうよ。」

「断る理由がないよ。綾音さんにはお世話になってるんだから!」


即決。

綾姉の存在感半端ないね。


「この前、一緒に式場連れて行ってもらったけど素敵なところだったよ。外からしか見たことなかったけどチャペルも披露宴場も素敵だったよ。ゴスペルコンサートとかクリスマスイルミネーションとかもやってるんだって。」


「で、史華も纐纈くんとの結婚式を想像してきたのよね?」


「そ、それは……まぁ、ねぇ。」


みやびちゃんのツッコミに顔を赤くして俯く史華ちゃん。

わかるよ?私だってそうちゃんとの結婚式想像しちゃうもん。

タキシードに身を包み祭壇の前に立つそうちゃん。お父さんと一緒にヴァージンロードを歩く私。

祭壇の前につくとお父さんがそっと私から離れてそうちゃんに「娘をよろしく」って言うの。

そうちゃんは頷き、私の手を取って2人ど階段を上がっていく。

そして神様の前で誓うの。


『健やかなるときも病めるときも—』


「いひゃい!」


頭に痛みを覚えると目の前の祭壇はなくなり、食べかけのケーキが目に映った。


「ごめん史華。ここにも1人妄想してる人がいたみたい。」


「あはははは、だね。香澄ちゃん口に出してたよ。」


呆れ顔のみやびちゃんと史華ちゃん。


「あ〜!夢か〜、幸せな夢だったな〜」


「夢というよりも妄想だね。」


テーブルに突っ伏して残念がる私に追い討ちをかけてくるみやびちゃん。


「いいじゃんか、妄想するだけなら誰にも迷惑かけないもん。」


「そう卑屈にならないでよ。まだ香澄ちゃんにもワンチャン……、ないかな?」


「ないの?ないなら言わないでよ〜!」


みやびちゃんと戯れあっていると、史華ちゃんがいたたまれない表情になっていた。


変な気使わせちゃったな。


「史華ちゃんならチャペル式も神前式もどっちも似合いそうだよね。みやびちゃんはどちらかというと神前式って感じかな?」


私は少しだけ話題を変えてみた。


「あ、わかる気がする。香澄ちゃんはチャペル式だよね。」


察してくれたみやびちゃんが乗ってきてくれた。


「香澄ちゃんのウェディングドレス姿綺麗だろうね。背も高いしスタイルもいいから似合うよね。私は胸がないから和装の方がマシなんだろうね。」


「何よ史華、自虐ネタ?最近育ってきてるんだからそのうちEカップくらいになるかもよ?」


「ないから。」


無表情無感情でみやびちゃんに返答する史華ちゃん。さすがのみやびちゃんも平謝りしている。


「私もそうちゃんに揉んでもらえば1サイズアップするかな〜?」


そんなふとした疑問も史華ちゃんとみやびちゃんの冷たい視線に瞬殺された。


「もういいじゃん。垂れるよ?」


「あ、いや、そこまで大きくないですよ?」


「「はっ?」」


「な、なんでもないです。」


恐っ!

2人からのプレッシャーが半端ない!


「そ、それよりもさ、二次会のこと相談させてよ。あと2か月くらいしかないし冴子先輩と話し合いする機会もあまりないからさ。」


「あ、そうだね。」


なんとか、話題を逸らすことに成功したみたい。


「定番のビンゴ大会じゃない?景品はバストアップブラとか?」


「いや、みやびちゃん。男の人もいるよ?」


「女性にあげればいいじゃない?出会いのきっかけになるし。」


「それってセクハラになるんじゃない?」


まだ引っ張るの?

もう忘れようよ!


「ジャンケン大会もいいよね。景品はヌーブラとか。」


「いや史華ちゃん、男性もいるから。」


「女性にあげればいいよね。出会いのきっかけになるし。」


「もうおっぱい忘れようよ〜!」

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