第77話 生徒会代表選挙 契り編
「本日より生徒会会長に就任しました聖川香澄です。つい先日、役員就任の挨拶をしたばかりなので抱負は割愛させてもらいます。そして会長就任なのに代表選挙のお知らせです。生徒会代表の纐纈先輩よりお知らせいたします。」
古橋さんの退任により臨時で生徒会長に就任したのはいいんだけど、すぐに次の生徒会代表選挙の公示がされた。
「生徒会代表の纐纈です。本日選挙の公示がされたわけですが選挙管理委員会は例年通り先生方にお願いしています。委員長は倉重先生です。立候補の期間は今日から2週間。自薦他薦は問いません。ぜひと言う方は倉重先生まで申し出てください。」
『香澄ちゃ〜ん。立候補して〜!』
『纐纈先輩、もう一年お願いします〜!』
『倉重先生〜、奥さんに立候補させてくださ〜い!』
告知を受けて生徒達の声援が飛んだ。
立候補か〜、どうしようかな〜?
明確なビジョンがないのに立候補するのも失礼だと思うしね。
綾姉をチラ見すると鋭い目つきで周りを見渡してる。ご機嫌ナナメ?人殺しのような綾姉を無視して総会を締めた。
「聖川さん。」
総会が終わり教室に戻ろうとしたところで倉重先生に呼び止められた。
「どうしました?」
倉重先生とは生徒会以外での接点がないため、個人的に話しかけられたことはなかった。
「今日は生徒会の集まりはない予定だけど放課後、生徒会室にきてくれないか?大事な話がある。」
「わかりました。」
返事をしたものの職員室じゃなくて生徒会室に呼び出しって?
大事な話?選挙のことだろうか?
理由がわからずに1人で悩んでいると先生が笑い出した。
「くくくっ。ごめんごめん。君にとっての放課後の呼び出しは告白ってイメージが強いかな?生憎と告白ではないし2人っきりではないから警戒しないでくれよ。」
「いえいえ!さすがに先生相手にそんな勘違いしませんよ!先生なら選り取り見取りで彼女に困ってないって噂が、、、いひゃい!」
突然後頭部に激痛が走ったため、みやびちゃんだと思ったら、鬼姉が腕組みして私を睨んでいた。
「あ、あやねぇ?」
「こらポンコツ、先生に対してなんて失礼なこと言ってるの?私はあんたをそんな子に育てた覚えはないよ。」
「いや私、綾姉に育ててもらった覚えは、、、」
有無を言わせぬ圧力をかけられた私はただただ頭を下げた。
「失礼なことを言ってすみませんでした。」
それはもう風になびく柳のようにしなやかに頭を下げ続けていた。
「こらこら纐纈。あまり後輩をいじめるなよ。じゃあ聖川さん、放課後生徒会室でね。後ろの怖い先輩も一緒だからね。」
「先生?」
ドスの効いた声が背中から聞こえてくる。
先生、私を巻き込まないで下さい!
「ほらほら、纐纈もそんなに眉間にシワを寄せてると美人が台無しだぞ。じゃあ2人とも放課後忘れないようにね。」
綾姉すらも手玉に取るとは!さすがは大人!チラッと振り向くと口元を手で押さえ、顔を真っ赤にした綾姉が立ち尽くしていた。
「あ、綾姉?」
今までに見たことのないようなかわいい姿に思わず絶句してしまった。
「う、うん!香澄、じゅあ放課後にね。」
さっと顔を背けて綾姉は走って行った。
「廊下は走らないでくださ〜い。」
一応、生徒会長なので注意しておきました。
「なんだったんだろ?」
♢♢♢♢♢
「失礼します。」
「どうぞ。」
放課後、生徒会室にきた私が扉をノックすると綾姉が応じてくれた。
『ガチャ』
扉を開けると不思議なことに、倉重先生の膝の上に綾姉が座っていた。しかも両手は先生の首に巻かれ、あたかも恋人に甘えるかのような姿だった。
「へっ?は?」
目の前で何が起こってるのか理解不能。きっと目を丸くして固まっていたんだと思う。
「こらっ!見られたでしょ!早く離れなさい!」
「別にいいじゃない香澄なんだから。今から説明するんだし。」
説明?
「聖川さん、とりあえず扉閉めてカギかけてくれるかな?綾音さんは暴走ぎみらしいから。」
「あ、はい。」
私は慌てて扉を閉めてカギをかけた。
「香澄、座って。」
綾姉が倉重先生の隣に座り、向かい合わせで私は座った。
「さてと香澄、今度の選挙のことなんだけど。」
「えっ⁈違うよね?綾姉、今その話題じゃないよね?」
思わず机に身を乗り出して綾姉に詰め寄った。
「何よ。ちょっとした照れ隠しじゃない。それくらい察しなさいよ。」
よく見ると綾姉なの首元がほんのり朱に染まってる。
「綾音。恥ずかしいなら僕から話そうか?」
倉重先生が痺れを切らせて立ち上がろうとするのを綾音は手で制した。
「誠さん、これだけは譲れないんだ。ちゃんとやるから。」
これまでとは違い真剣な表情で私と向き合う。
「香澄。高校卒業した4月1日に私達の結婚式をやるわ、これ招待状ね。」
「はい⁈」
思考停止。
綾姉がおかしくなりました。
まてまて。
ツッコミどころが多すぎる。
「綾姉、今日エイプリル・フールじゃないよね?」
「まだ結婚式じゃないね。」
「綾姉、進学するよね?」
「学生結婚だね。」
「綾姉、相手先生だよね?」
「高校教師だね。」
「綾姉、18だよね?」
「青春だよね。」
「綾姉、幸せなんだよね?」
「とてもね。」
次第に目頭が熱くなり視界が歪んできた。
「先生、綾姉幸せにしてくれるんですよね?」
「約束するよ。」
ぼやけた視界の中で先生が微笑んでくれた。
「綾姉!」
私は綾姉の胸に飛び込んだ。
弾力はあまりない。
「あんた感動のシーンで失礼なこと考えなかった?」
「滅相もないです。」
綾姉の胸の中で冷や汗をかく。
さすがに勘がよろしい。
「あっ!」
私は慌てて距離を取った。
「どうした?」
綾姉は急に離れた私を怪訝そうに見つめる。
「ごめんね。お腹大丈夫?」
そう、赤ちゃんがいる可能性が、、、
「ないから。」
はい、ごめんなさい。
綾姉に限ってそんな無責任なことはしないだろう。きっと相手は先生だからまだ純潔なままの、、、
「ちゃんと避妊してるから。」
「恥ずかしいからやめなさいね。」
先生が横から口を挟んだ。
「とりあえず招待状を早くしまって。絶対になくさないように。学校で見ないように。」
「大丈夫。そうちゃん絡みじゃないから優等生バージョンだよ。」
サムズアップで応えた。
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