第68話 紅白対抗 体育祭前編
「そうちゃん、勝つよ!」
「当たり前だろ香澄。」
「今日の史華ちゃんは敵だよ。」
「ノーコメントだ。」
そうちゃんはあからさまに目を逸らした。
「ノリでしょ?そこは冗談でも『史華は俺が倒す!』くらい言っても怒られないよ?」
あ〜、本日は翔栄高校体育祭にお越しいただきありがとうございます。
登校の体育祭はクラスを紅白の2チームに分けて行われます。生徒会主催行事となりますので各チームのキャプテンは生徒会役員が請負います。
紅組キャプテン庶務、聖川香澄。
白組キャプテン副会長、纐纈綾音。
いまこの2人がグラウンドで睨み合っています。
「綾姉、下克上だよ。日頃の恨み晴らしてやるんだから。」
綾姉に向かってビシッと指をさす。
格好つけてみたが後が怖い。
「香澄、調子に乗ってるといろいろバラすわよ。」
『いいぞ〜。』
『スリーサイズ教えてくれ〜。』
なぜか綾姉の手には拡声器。
「ちょっと綾姉?なんで拡声器?おかしいでしょ?」
綾姉は首をコテっと倒してわからないフリをする。
綾姉の隣では葛城くんが白組の団旗を掲げてる。
「和真くん、旗は75度キープだと言ったでしょ?少し下がってるよ。」
「う、うす。」
そうちゃんの親友の上に実行委員だった関係で綾姉に目をつけられてしまった。でも葛城くんが旗持ちというのは既定路線だね。
背が高いから目立つこと間違いない。
「そうちゃん、こっちも負けてられないよ。旗の角度は75度だよ!」
紅組の旗持ちは私の独断と偏見でそうちゃん。葛城くんに身長では劣るけど注目度で言えば今や校内で1位か2位かと言うところだよ。
白組の史華ちゃんには申し訳ないけど、今日はそうちゃんお借りします。そのそうちゃんを横目で確認すると旗を下ろしている。
「あ〜!そうちゃん旗おろしちゃだめって言ったじゃん!ほらほらちゃんと掲げて。そうちゃんは文字通り白組の
「誰がアレだって?俺はロビー派だ。」
そうちゃん古いよ。私達の年代だとゲームでしか知らないよ。
それでもそうちゃんがボケるのはノッている証拠だ。しかもユーヴェネタが出るほどの絶好調。
「そうちゃんと私がいれば紅組の勝利は確定だよ。」
「平川がいれば完璧だったのにな。お前あいつに負けるなよ。」
「いや、ちょっとみやびちゃん相手はキツいよ?瞬発力じゃ勝てないし腕力だって勝てないし。」
白組にいるみやびちゃんを見ると、私達の会話が聞こえてたかのようにこちらを見ている。その表情は裏のある笑顔。はっきり言って後が怖い。
♢♢♢♢♢
「史華。纐纈くんと別々になっちゃったね。でも遠慮せずに応援すればいいからね。大声出してもいいよ」。
「さすがに敵チームの総士を大っぴらに応援できないよ。目立ちたくないだろうしね。今日は香澄ちゃんに総士の応援は譲るよ。」
「器の大きい、いい女だね〜。」
雅が私の頭を撫でてきます。
「子供扱いじゃない。」
苦笑いで私が答えると雅は笑った。
「纐纈くんがやるとうれしいのに私がやると子供扱いなんだね。同じことしてるのにね。どんだけ纐纈くん好きなのよってね。もう最近じゃ隠そうともしないもんね。」
「総士が嫌がるから。総士の前で気持ちごまかすとすぐに不機嫌になるし。それなら自分の気持ちに素直ななろうってね。それが私達が上手くいってる理由かな?」
「なるほどね。史華がここまでデレるとは思わなかったけど、どれだけ纐纈くんを好きかわかったよ。うん。でも今日は敵だから容赦しないよ。史華もわかってるよね?」
雅の表情は獲物を狙う獣のように鋭くなっていた。
「いや、たかが体育祭なんだから穏便に」
「たかが?甘いね史華。小学校の運動会でも私が負けると半年はネタにしてくるようなヤツに容赦はいらないよ。こと運転に関しては纐纈くんにも負ける訳にはいかないんだよ。もし史華が纐纈くんに味方したら辱めを受けてもらうからね。」
「いやいや。辱めって。どれだけガチなのよ。普通に応援させてよ。」
「諦めなさいジュリエット。あなたと
「もう、どうでもいいよ。辱めは受けないからね。」
雅がこれまで総士に屈辱を味わされたのはわかったけど、ここまで恨まれるって総士は何してきたの??
♢♢♢♢♢
「そうちゃん、今日は何種目出るの?」
開会式の後、席に戻ろうとしていたそうちゃんを捕まえた。足元には毎朝履いているランニングシューズ。
毎朝履いてるからかなりくたびれてきた。
そろそろ替え時かも。
「今日は3種目だな。借り物競走と3000m、紅白対抗リレー。」
紅白対抗リレーは各学年の男女が交互に走る競技で1年は私とそうちゃんが選ばれていた。
「そうちゃん借り物競走出るんだ。生徒会がちょっとした仕掛けしてるから楽しみにしててね。」
まあ、定番のやつなんだけどね。
やり方が綾姉らしいと言うか。
「まあ、どうせ好きな人とかだろ?史華お姫様抱っこで走るだけだろ。」
そうちゃんはため息とともに席に戻って行った。
「お、お姫様抱っこ。そうちゃんがお姫様抱っこ。う、うらやまし過ぎる。」
そうちゃんが私をお姫様抱っこしている姿を想像しようとしていると、
「生徒会庶務、聖川香澄。さっさと本部に集合!」
綾姉にマイクで怒られた。
会場からは笑い声が溢れてきた。
「もう!綾姉マイクで呼び出さないでよ。みんなに笑われたでしょ!」
「即本部集合って事前に言っておいたよね?ほら、さっさと仕事しなさい。和真くん、そこのネット運んでくれる?」
綾姉が正論過ぎてぐうの音も出ない。
私は「すみませんでした。」とみんなに頭を下げてからマイクの前に座った。
原稿を確認していると隣の綾姉の手が頭にポンと置かれた。
「今日はお祭りだから十分楽しみなさい。」
相変わらずお姉ちゃんはツンデレです。
私は呼吸を整えてからマイクを握った。
「第一種目、障害物リレーを行います。出場者のみなさんは入場門までお集まりください。」
さあ、体育祭のスタートです!
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