第67話 衝撃!総士と香澄の初デート 夜編
街はイルミネーションが彩り恋人たちは寒さを理由に身を寄せ合う・・・季節ではないので、普通に街頭がついてる程度です。はい。
「暗くなってくると肌寒く感じるな。香澄、寒くないか?」
「そうだな〜。少し肌寒いからこうするね。」
そうちゃんの左腕を抱きしめて密着度を上げる。そうすると身体だけじゃなく心まで暖かくなってきた。
「えへへ〜。」
自然と笑みが溢れてくる。
「何やってんだよ。胸当たるからもうちょい離れろよ。」
「わざと!別に嫌な気分じゃないよね?たまには私を堪能してよ。」
「訳わからんことを。こんな状態で堪能できるか。」
そうちゃんはため息混じりで呟いてる。
「えっ〜っと、それは直接触らせろってことかな?さすがにここじゃ無理だけど人がいないところならいいよ?」
熱で顔が赤くなっているのを意識しながらもそうちゃんを上目遣いで見上げる。
「自分の身体を安売りするな。まあ、それはおいおいとだな。」
否定はしない!
私はいつでもウェルカムだよ!
「まだ買いたいものはあるのか?」
「雑貨屋さんに行きたい。アクセサリーとか小物を入れるものが欲しいんだ。いい?」
「ん。じゃあ行くか。」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
本当はこのまま朝まで一緒にいたいけど、それは叶わぬ願い。だからこの幸せな時間を思う存分楽しみたい。
「そうちゃん、結局私しか買い物してなくてごめんね。」
「ま、それは仕方ないだろ。欲しいものがなければ無理に買う必要ないだろ。」
「えへへ。確かに。」
「俺の買い物は次回な、とりあえず雑貨屋行くぞ。」
♢♢♢♢♢
「そうちゃん。」
「ん?」
「この蓋つきとついてないのどっちがいいと思う?」
装飾が施されたジュエリーボックスを2つ、そうちゃんの前に出した。片方は蓋が付いているがガラス張りで中が見えるようになっている。もう一つは蓋が無い代わりに縁取りに綺麗な模様が描かれてる。
「ん〜、俺なら蓋なしだな。どちらも見た目は綺麗だけど蓋なしの方が開ける手間省けるだろ。」
「え〜!そんな理由?この小さな箱には女の子の夢と希望が詰まってるんだよ?蓋を開けるドキドキ感が手間ってなによ。」
私は少し頬を膨らまし不満顔を見せる。もちろん冗談半分。
「じゃあ聞くなよ。お前がそう思ってるなら蓋つきにしろよ。」
あらま、少し不機嫌にさせてしまった。
春頃の私だったら今のそうちゃんにびくびくしていたかもしれない。
「そうちゃんの感想聞いておきたかったの。そんな不貞腐れないでよ。じゃあこれ買ってくるね。」
私はそうちゃんを待たせて蓋のないジュエリーボックスをレジに持っていった。
「素直じゃねぇ〜な。」
背後からそんな声が聞こえた気がした。
『お互い様だよ』
♢♢♢♢♢
ディナーには某高級ホテルでビュッフェを、とも思ったんですが、夜は軽めに済ますそうちゃんと一緒なので小料理屋で小粋にお食事することにしました。
「お〜、サラリーマンになった気分だな。仕事の後に一杯って。カウンターに並んでる料理も旨そうだ。」
「だね。いろいろ食べたいから私はワンプレート定食にする。そうちゃんは?」
「お!俺もそれだ。すみません、ワンプレート定食2つお願いします。」
「はーい。」
アルバイトらしい女性店員さんが元気に返してくれた。
「こういうお店でアルバイトも楽しそうだね。」
「まあな。でも酔っ払いも多そうだから大変だと思うぞ。」
「だね。ねぇ、そうちゃん。私が絡まれたら助けてくれる?」
上目遣いでそうちゃんを見つめる。
「ま、目の前だったらな。」
そうちゃんは私の視線を躱してメニューを見始めた。てれ隠しだ。
「ん。その時は私を守ってね。」
そうちゃんとこんな甘い時間を持てるなんて夢のようだ。
今は他のことなんて考えられない。
「お待たせしました。」
トレーの上に小皿が7つ。
どれも美味しそうだ。
「「いただきます。」」
味も量も申し分なく、私達はおいしい料理に舌鼓を打った。
「ありがとうございました〜。」
帰りにも女性店員さんが元気な声でお見送りしてくれ、このお店は私の中で思い出深いところになりました。
「さて、時間も時間だし帰るか。」
「うん。」
地元の駅までは電車で20分程度。
改札を抜けると微かな脱力感が襲ってきた。
「そうちゃん。歩いて帰りたい。」
「いいぞ。」
バスに乗ってしまうと10分で家に着いてしまう。少しでも長くこの時間を続けたかった。
そうちゃんの左手を握ると優しく握り返してくれた。この先、この手が再び繋がれる日がくるかなんてわからない。
「そうちゃん。」
「ん?」
無言で歩いていた私は意を決して呼び止めた。
「どうした?」
「今日はありがとうね。すごく楽しかった。でもね。一つだけ心残りと言うか忘れてたことがあるの。」
「ん?」
「キスして。」
「はっ⁈いやいやさすがにそれは」
「わかってる。でもお願い。私に思い出をちょうだい?」
私はそうちゃんの首からに両腕を回して距離を縮める。
唇と唇が触れ合う瞬間、
「香澄ちゃん!」
「いちゃい!」
激痛が走った。
目の前にはみやびちゃんと史華ちゃん。
「さっきから何回も呼んでるでしょ!自分から史華にデートの様子話させておきながら聞いてないってどう言うこと?」
みやびちゃんも史華ちゃんも呆れ顔。
そうでした。
昨日のデートの様子が知りたくて昼休みに史華ちゃんに聞いてたんだった。
「ごめん。私寝ちゃってたんだね。」
まさか夢を見てたなんて。
でも幸せな夢だったな〜。
「香澄ちゃん。ずっと起きてたよ?遠い目をしながら独り言ばっかりだったよ。」
「全く。どうせ史華の話を聞きながら纐纈くんと妄想デートでもしてたんでしょ?」
「妄想!それ夢見るより痛いやつ!」
「まあ、香澄ちゃんポンコツだから今更だよ。」
「みやびちゃん、言い方!」
「で、どうだった?甘々の纐纈くんとのデートは。」
みやびちゃんが身体を乗り出して聞いてくる。
「え〜、恥ずかしくて言えないよ。」
私は赤くなる顔を両手で押さえながら話すことを拒否する。
「ま、香澄ちゃんが妄想してた以上のことを史華は経験してきたんだけどね。」
史華ちゃんをジト目で見る。
「ずるいよ史華ちゃん!」
こうして私とそうちゃんの初デートは終わったのでした。
って、始まってもないよ!
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