第60話 お弁当大作戦

「ねぇ、公佳。」

夕食後、リビングでまったりしている公佳にお弁当の献立の相談をしました。


「ん〜。お弁当ね。結構大変そうだよね。カズくんもだけど2人とも高校生とは言え、代表に選ばれるくらいの選手だから食に対しても意識高いよ。チームの栄養士さんがアドバイスしてくれるから明日相談してみるよ。」


総士に食べてもらうんだから栄養バランスも考えなきゃね。


「公佳。明日私も一緒に聞いてもいいかな?」


「うん?大丈夫だと思うよ。先に話通しておくね。」


「ありがとう。助かる。」


あとは、お義母さんにも相談してみようかな?いつも総士のご飯作ってるんだか・・・、あ!?平日はお姉さんが作ってるんだ。お姉さんにも相談しよう。


公佳の隣に腰を下ろして、いろいろ思案しているとふと視線に気付きました。


「どうしたのお母さん?そんなジト目で見ないでよ。」


正面からじっと私を見ているお母さんの表情は不満でいっぱいです。


「お母さんにも相談しなよ。」


公佳に脇を肘で突かれ指摘されました。


「えっと、お母さん。相談があるんだけど。」


途端に満面の笑み。

待ってましたと言わんばかりに私の隣に座り直した。


「うんうん。史華の相談って何かな?なかなか話してくれないからお母さん、やきもきしてたんだけど。」


お母さん、そんなきらっきらの瞳で見つめられると困るよ。確かに私のが総士のことを話すことはあまりないけど、それはこの前キスしてるところを見られたのが原因な訳で、秘密にしてるって訳ではないんだけどね。


「話してくれないかわりに仲良しな姿は見せてもらっちゃったけどね。公佳には聞いてるけど随分大切にしてもらってるみたいね。」


「◎△$♪×¥●&%#?!」


「お母さん、それは本人に言っちゃだめなやつだよ。まあ、私なんて2回も見せつけられたけどね。総くんが遊びに来た時は史華の部屋の扉は開けない方がいいよ。」


「公佳!そんなこと言われたら家に招待できないじゃない!」


お母さんと公佳の2人に茶化された私は顔が真っ赤になっているだろうと認識し、この場から逃げ出そうと試みたが、ソファーから立ち上がる寸前でお母さんに腕を掴まれた。


「ごめんごめん。茶化すつもりじゃなかったんだけどついね。でお弁当の献立?どこに行くか決まってるの?」


「とりあえず港の方。水族館か遊園地かな?公園もあるし。ショッピングモールもあるから行ってみてから決めるって感じかな?」


当日一緒に考えながら回るって言うのも楽しそう。総士はちゃんとリードしてくれるだろうからね。


「そうか。高校生アスリートだから量も食べるんだよね?」


「総くんはプロテインとかも使ってるから、普通より少し多いくらいだよ。」


プロテイン?そうなの?


「うんうん。史華は何系で攻めるつもり?和洋中だと洋食?」


「総くんは和食が好きだよ。合宿のバイキングでだし巻き卵とぶり大根を絶賛してたし。」


私が質問されてるんじゃなかった?


「だし巻き卵は定番だしね。史華も得意でしょ。おにぎりは必須だね。」


「総くんは梅干しのおにぎりが好きだよ。疲れた時に食べる梅干しは絶品だって。」


「うんうん。方向性は決まってきたじゃない。それにしても公佳。よく総士くんのこと把握してるのね。」


「カズくんのことほどじゃないけどね。付き合いは史華より・・・って史華?その表情怖いからやめて。」


気付いたら私より総士をわかってるアピールの公佳を睨みつけていた。


「まあ、私の方が付き合い短いからね。まだ知らないことの方が多いのは事実だから。」


やっぱり香澄ちゃんよりも公佳相手の方が焦ってしまう。だって総士が告白までした相手だもん。


「はいはい。そんなことで落ち込まないの。誰が見たって史華にベタ惚れじゃない。今度は家にも遊びに来てもらってよ。私もゆっくり話したいし。史華を大事にしてくれてるお礼もしなきゃね。」


「・・・うん。たぶん2つ返事で来てくれる。」


総士なら家族との付き合いも大事にしてくれると思う。公佳との距離は現状維持でお願いしたいけどね。


「総くんなら、史華さんをくださいって言ってくれるんじゃない?」


「公佳もカズくん連れてきなさいよ。あんたこそ全然連れてこないじゃない。うまくいってるの?」


お母さんの矛先がうまいこと公佳に向いた。


「そうだよ。総士も心配してたよ。やたらダブルデートに誘われるけど上手くいってないのかって。」


「ちょっと史華!こんなところで言わないでよ。全然問題ないから!仲良くやってます!」


やられっぱなしじゃ悔しいしね。私としても心配してるんだけどね、と。


「後はお義母さんとお姉さんに送ったメッセージの回答待ってから献立決めるよ。」


「何、史華。総士くんのお母さんとお姉さんとも仲良くやってるの?外堀も上手に埋めてるのね。さすが私の娘ね。心を掴んだから次は胃袋。最後に身体なんだけど・・・、お母さん譲りでごめんね。」


お母さんは自分と娘2人の凹凸を確認してから頭を下げた。




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