第59話 計画

昼休み。


お弁当を食べ終わった総士がやってきました。


私の席は廊下側の前から3番目。


香澄ちゃん、雅と机を合わせて食事中の私の頭を窓から覗き込んでる総士は撫でまわしています。


「そうちゃん!次私にもお願いします。綾姉にこき使われて疲労困憊です。手動充電を希望します。」


「俺は充電器じゃねぇよ。それに授業に疲れた俺がいま癒されてる最中だ。」


「む〜!幼馴染特権があるはず。史華ちゃん、使用の許可をお願いします。」


チラッと総士を見ると嬉しそうに私の頭を撫でている。その光景を見ると私も思わず微笑んでしまいます。


「あ、じゃあたまには私も幼馴染特権使ってみようかな?纐纈くん、撫でてみて。」


雅まで悪ノリをしてさ。


「ん。」


総士は空いてる方の手で雅の頭を撫でた。

誰もが予想外。

言った本人の雅でさえ固まっています。


「あ〜!!!ずるい!なんでみやびちゃんにはして私にはしてくれないのよ〜!」


「ん〜?なんとなく。平川がこんなこと言うなんて珍しいからどんな反応してくれるか気になってさ。」


それは私もわかる気がするけどね。

総士の言葉を聞いた雅がハッとした表情で再稼動しました。


「び、びっくりするじゃない。突然なにするのよ!って私が言ったんだ。ま、まあ悪い気はしないもんだね。」


雅の顔が羞恥で赤くなってきた。

最後の方は声が小さく聞き取れませんでした。


「で、来週の日曜日がオフになりそうだからデートしませんかね?」


総士は雅の頭から手を離すと、香澄ちゃんの頭を1回だけポンとやってから手を戻しました。


それまで不満顔だった香澄ちゃんの表情が緩

んでいましす。


「来週の日曜日?大丈夫だよ。まだシフト出してないもんね。どうしようか?」


お弁当箱を片付けてから総士に向き合う。

定番の動物園、水族館、遊園地、街歩きもいいね。


「そうだな。土曜バイト終わってから一泊ってのも・・・無理だよな。」


私の表情を見た総士が苦笑い。

さすがに泊まりは許可がおりないよ。


「冗談だからそんな顔するなよ。まあ、とりあえずの予定だけは空けといて。どうするかは前日までに決めればいいだろ。」


そんな言うと総士は自分の教室に戻っていきました。


「そうちゃんと一日中デートいいな〜。お泊りも捨てがたい!」


香澄ちゃんの頭の中では総士とのデートが妄想されてるようです。


「でもお泊りってことはそういうことでしょ?初デートでそれはどうなの?ってね。」


雅は苦笑いしながらりんごを頬張った。

お泊り、やっぱりそういうこと?

もちろん嫌って訳ではないけど、それが目的ってなるのは嫌。

せっかくの初デートなんだから不安要素はなくしたいな。


「たぶん、それは考えてないと思うよ。ただ長い時間一緒にいたいんだよ。」


香澄ちゃんは疑う余地もないと言わんばかりに断言しました。


「そうちゃんの性格からすれば史華ちゃんが不安になるようなことはしないよ。」


うん、さすが香澄ちゃん私もそう思うよ。

私だって許されるなら泊まりでデートしてみたい。朝から晩まで一緒にいられるなんて幸せ過ぎでしょ?

まあ、するしないは置いといて。私だっていつかはって覚悟はあるもん。


「で、史華は行きたいところあるの?定番の遊園地とか映画とか?それとも史華の手作り弁当持って公園でまったりデートも良さそう。結局、纐纈くんってどんなデートしてもしっくりしそうだよね。背伸びして小洒落たデートも出来そうだけど史華とならその辺の児童公園でも満足してくれそう。」


さすがに児童公園はないけど、雅の言う通り私も総士と一緒なら場所にはこだわらないかな?


「あ、でも観覧車乗りたいかも。夜景でもいいし、夕暮れでも。いい景色見て思い出にしたいな。」


「乙女だね〜。でも思い出にしたいってのはわかるな〜。史華、港の方行けば?水族館も遊園地も大きめの公園もあるしね。最近ショッピングモールもできたから一日中楽しめるんじゃないかな?ね、香澄ちゃん。」


香澄ちゃんは雅の問いかけに答えません。どこか遠い目をしているようです。


「香澄ちゃん?お〜い、香澄ちゃん?だめだ。たぶん妄想して自分の世界に入り込んでるね。」


香澄ちゃんらしいというか。

それはさておき、港はいい案かも。


♢♢♢♢♢


バイトの帰り道。


昼間のデートコースを総士に提案しました。


「でね。港ならいろいろあるから楽しめるかなって。」


「うん。いいんじゃないか?朝早くに行っても公園なら入れるし。長い時間楽しめそうだ。」


総士も納得してくれました。

でも、早い時間って何時から行くつもりなんだろ?


「でね。せっかくだからお弁当作ろうと思うんだけど、食べてくれる?」


料理が得意かと言われれば人に自慢できるレベルではないと答えます。


休みの日にお母さんの手伝いをするくらいなので普通の高校生レベルにはできるんじゃないかなって思います。


「史華が作ってきてくれるの?もちろん食べるよ。やばいな〜、楽しみで仕方ない!」


「そんなに期待しないでね?たいしたものはできないから。普通だよ普通。」


「史華が頑張って作ってくれるんだから普通なわけないだろ。あ、隠し味は愛でお願いします。」


私が嬉しくて俯いてると総士が笑顔一つで覗き込んできました。


「もう!」


私は、いつまやられっぱなしじゃ悔しいので

総士の頬を両手で引っ張ってキスをしました。


「おっ!」


突然、声が聞こえてきたので慌てて離れると、公佳と葛城くんが歩いてきました。


「史華ってば大胆だね。」

公佳は少し恥ずかし気に茶化してきました。

葛城くんは苦笑いを浮かべています。


「なんでいつもいるのよ!」

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