第54話 生徒会
私はいま学校のとある場所に軟禁されています。教室の半分程度の広さに机が6個対面式で並べてられています。
私は入り口に1番近い席に座らされ、これから起こる惨状に戦々恐々としています。
ポンっと私の肩に触れる手。
嫌悪感ではなく恐怖です。
身体を震わせながら振り返ると、取り付けたような笑顔。
「ひっ⁈」
思わず悲鳴が溢れます。
「か・す・み。」
「は、はい。何でしょうか副会長様」
そう、私の肩に手を置き作り笑顔で私を見下ろしているのは翔栄高校生徒会副会長、纐纈綾音先輩・・・さん?様?
「何じゃないわよね?昨日ここにくるように言っておいたよね?」
威圧感が半端ないです。
他の役員の皆さんは遠巻きに様子を伺ってます。
誰も助けてくれる様子はありません。
「か・す・み。」
「は、はい。」
私は古橋会長をチラッと見る。
あ、目を逸らした。
薄情な先輩です。
他の先輩も見るが知らんぷり。
「あんた、私が質問してるの聞こえてる?」
「は、はい。もちろんですよ〜。綾姉の言葉は一言一句聞き逃さないように調教されてますので。」
綾姉を仰ぎ見ると首をクイっ。
話せと促す。
「き、昨日はですね。史華ちゃんから話があるからと言われてましたので、緊急性が高いと判断しそちらを優先させていただきました。」
とにかく怖いので一気に説明した。
「はぁ〜。」
綾姉がため息を漏らし、私の頭に手を置く。
「それならちゃんと連絡しなさい。香澄に何かあったのかと心配したでしょ。もうちょっと自分の現状を把握しなさい。」
「ごめんなさい。ちょっと説明しづらいことだったから。」
いつも綾姉は私のことを見守ってくれている。私は実の姉のように慕っているし、甘えている。
「まあ、何もなかったならもういいわ。ちょっと、みんな座ってよ。なんでそんな隅に固まってるの?」
それは綾姉の殺気のせいだよ?
「お、おう。みんな座ろうか。」
生徒会長がみんなを促し席に座る。
ん?座る場所がおかしくない?
上座に綾姉?
「香澄、あんたうちの学校の生徒会の仕組み知ってる?」
「仕組み?ううん。」
「そ、じゃあ説明するわ。古橋くんが。」
綾姉はチラッと会長の方を見る。
話を振られた会長が狼狽。
事前に聞かされてなかったんだろうな〜。
なんかこの会長、綾姉に頭上がらなさそうだな。
「纐纈さんは本当に人使いが・・・。ん、うん。じゃあ聖川さん、説明するね。うちの学校の生徒会は選挙で1名のみ全校生から選出されます。で、選ばれた生徒は生徒会のメンバーを選び顧問の先生が承認するという仕組みになってます。」
へぇ〜。選挙で役員決めるんじゃないんだ。珍しい。内閣みたいだね。
「で、現在の生徒会の代表は副会長の纐纈さん。人事権は彼女が持ってます。」
「えっ?代表なのに会長じゃないの?何で?」
全校生に選出された生徒会の代表が副会長なんておかしくない?
「面倒じゃない。」
綾姉から無機質な回答。
面倒ごとを押し付けられている現会長さんに同情してしまいます。
「古橋くん、ありがとう。で、香澄。あなたには今日から庶務になってもらうから。」
「この前も聞いたけど、なんで私が?」
「元々優秀な1年生をスカウトするために枠を開けておいたの。一応首席なんだから合格ね。」
あ〜、次の生徒会の役員を育てるためにってことね。綾姉から言われたら断れないからってずるいな〜。
「で、もう一つは香澄が他の学年との繋がりを作るため。あんた部活やってないから2、3年生に知り合いってあまりいないでしょ?」
ですね。中学時代の知り合いくらいしかいませんね。そうちゃんみたいにバイトもしてないし。
「最後に、私の目が届くところにいてもらうためよ。」
「・・・。」
「雅からも聞いてるけど、最近アプローチが酷くなってるんだって?ストーカーまでもいかなくても付き纏われたりしてるんでしょ?雅だって常時一緒にいられるわけじゃないんだから、ちゃんと対策しなさい。」
「でも、」
「ん?」
「綾姉に悪いもん。そうちゃんみたいに巻き込みたくないもん。」
そう、中学のときみたいなことになったら、今度は綾姉まで巻き込んでしまう。
「あ、そういう気遣いいいから。2、3年生では私を巻き込もうとするやつはまずいない。やれとしたら1年だろうね。そこも根回しはしてあるから。」
根回し?綾姉って裏の組織とかのドンだったのかな?知りたくなかった裏の綾姉の顔が・・・?
「香澄、何か質問ある?」
「質問しかないよ?わかったのは綾姉が心配してくれてることだけだよ?生徒会って私には無理・・・」
「少し力を貸しなさい。忙しくしてれば気も紛れるから。とりあえず明日から放課後はここにくること。わかった?」
有無を言わさぬ威圧感。
「・・・はい。」
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