第52話 女子会
「おはよう香澄ちゃん。」
「おはよう史華ちゃん。」
昨日の夜、話があると連絡してきた史華ちゃんはいつも通りの様子。
「史華ちゃん、どこで話す?」
内容がわからない私はどこで話すのが最適か分かりかねていた。
「うん、ここで大丈夫かな?」
結局教室でOKとのこと、そんなに深刻なはなしじゃなさそうだね。
「じゃあこのままどうぞ!」
きっとそうちゃん絡みではあるだろうからなるべく明るく話したい。
「どうぞと言われると身構えちゃうよ。」
史華ちゃんははにかんでいる。
「じゃあ。昨日のことなんだけど、駅前のショッピングモールで、3年の冴子さんて先輩と2年の木下さんていう先輩と会ったんだけど、この2人のことを教えて欲しいの。」
あ、まさかの最悪パターンだった。
木下先輩がこの学校にいるのは知ってたし、そのうち会うだろうとは思ってたけど、まさかそうちゃんが史華ちゃんといるときに再会するなんて。
「もちろん、そうちゃんと一緒だったんだよね?そうちゃんから説明してもらわなかったの?」
そうちゃんなら隠したりせずに話してるはず。
「一通りはね。でも香澄ちゃんからも聞いてみたいなって思って。だめかな?」
「ううん、何か役に立てるかはわからないけど史華ちゃんのお願いを無視するわけにはいかないね。」
心中穏やかじゃないが少しおどけた感じで史華に向き合う。
「そうだな。何から話そうか?」
突然の申し出だったのでどう話すかすぐにはまとまらない。
どう話すか思案していると、
「吉乃ちゃん、おはよう。昨日はど〜もね。あの後は彼氏と盛り上がったの?」
クラスでは派手なグループに所属している小鳥さんが史華ちゃんに近づいてきた。
朝からテンション高いな〜。
そんな印象だ。
史華ちゃんに向ける眼差しは少し小馬鹿にしたようなもので、虫唾が走る。
「・・・。」
史華ちゃんは軽く会釈しただけで、取り合おうとはしない。
「あ、聖川ちゃんもおはよう。昨日デート中の吉乃ちゃんを見かけたんだけど、彼氏いいね〜。木下先輩睨みつける眼差しでイカされそうだったよ。」
なんだろうこの子は。
シャクに触るとはこのことなんだろう。
とりあえず消えて欲しい。
「あの人でしょ?聖川ちゃんがお熱上げてたのは?いや〜、聖川ちゃんほどの美人さんが惚れるのもわかるわ〜。彼氏、夜も強そうだね。吉乃ちゃん小さいから壊れちゃわないか心配だよ〜。」
「ちょっと!小鳥さん。」
思わず立ち上がり小鳥さんに詰め寄ろうとしたところに、
「香澄ちゃん、史華。おはよう〜。」
みやびちゃんが私と小鳥さんの間に割り込むようにして入ってきた。
「小鳥さん、向こうでお仲間がお待ちみたいだよ。」
みやびちゃんは首だけ後ろを振り返り、小鳥さんに離れるように促す。
「・・・そ。」
小鳥さんはみやびちゃんに促されるまま、教室の後ろにいるグループに混ざった。
「みやびちゃん、ありがとう。」
「香澄ちゃん、あんなの相手にしちゃだめだよ。」
こういうとき、冷静に対応できるみやびちゃんは本当にすごい。
いつも助けてもらってばかりだ。
「史華?」
ずっと俯いたままの史華ちゃんの頭にみやびちゃんはポンと手を置き、
「史華。気にするなよ。」
と声色を変えて慰めている。
それを聞いた史華ちゃんは、みやびちゃんにジト目を向けて、
「似てないよ。総士はもっと渋い声だもん。」
と微笑した。
「史華ちゃん、邪魔が入っちゃったからよかったら放課後、家で話さない?みやびちゃんもオマケで。」
「ひどいよ香澄ちゃん」
みやびちゃんの泣き真似は酷かったよ。
♢♢♢♢♢
『ピンポーン』
『は〜い。』
インターホンから香澄ちゃんの声が聞こえてくる。
放課後、いったん自宅に帰った私は駅で雅と合流して香澄ちゃん家を訪れた。
「香澄ちゃん、お待たせ。プリン買ってきたよ。」
『ありがとう〜。いま開けるね。』
扉が開き、私達は香澄ちゃんの家まで上がって行った。
香澄ちゃんはエレベーターホールまで迎えに来てくれていた。
「いらっしゃい。暑かったでしょ?早く入ってプリン食べよう。」
「香澄ちゃん、本当にプリン好きだよね。この前も1人で3個食べてたでしょ?」
満面の笑みでプリンを食べてる香澄ちゃんは鼻歌が聞こえてきそうな程ご機嫌。
「ふふふ〜ん。さすがみやびちゃんにだよね。私の好きなものをよくわかってらっしゃる。」
付き合いが長いだけあって、お互いの好みもよくわかってる。
「で、今日の女子会のテーマって何かあるの?」
「実はね、」
私は雅に昨日のことを説明し、今後の対応のためにもあの人達のことが知りたかった。
「なるほどね。香澄ちゃん、私が客観的に説明するよ。」
「うん。よろしくね。」
香澄ちゃんとみやびちゃんがソファに座り
センターテーブルを挟んだクッションの上に私は座った。
「よし。じゃあまずは冴子先輩から。
先輩は綾音先輩の友達で中学時代からサッカー部のマネージャー。小さくってかわいいから部員からもかなりモテてたみたい。一時期、纐纈くんもよく話してたかな?」
「んん?」
そんな話は聞いてないよ?でも昨日の様子だと今は全くって感じだったよね?
「まあ、昔の話よ。」
雅が苦笑いで返してくれた。
「あ、中学からマネージャーってことは香澄ちゃんはよく知ってるの?」
「うん?まあよく知ってるよ。よくね。」
か、香澄ちゃん?完全に親の仇を見る目になってるよ。
「まあ、よく纐纈くん絡みで揉めてたから、香澄ちゃんと冴子先輩は犬猿の仲ね。」
「違うもん。あんなそうちゃんをモノ扱いするような人は許せないだけだもん。今だってそうちゃんのことなんて全く考えなくて勧誘なんてして。木下先輩のいるところなんて行かせたくないに決まってるじゃない。」
総士をサッカー部って。
実力考えればクラブチームで続けるのが最良なのに。
「で、ついでにいま名前が出た木下先輩ってのも中学時代のサッカー部の先輩ね。あの人は端的に言うと香澄ちゃんのストーカーで纐纈くんに摘発されて逆恨みした最低野郎だね。」
昨日、総士に聞いた話をまとめた感じかな?
とにかくみんないい印象はないんだね。
「うん、ありがとう。総士には一応気をつけるように言われてるから用心しておくに越したことはないね。」
「だね。前科がある分ちょっと怖いかも。」
いざとなったら総士が助けてくれるだろうけど四六時中一緒にいる訳じゃないし。
なるべく迷惑をかけないようにしないと。
「後は小鳥さんだね。面倒くさそうな性格してそうだし。明らかに挑発してきてたしね。」
あの場は雅がうまく治めてくれたけど・・・。
「総士にちょっかい出しそう。」
「そうちゃん?心配いらないよ。」
「でも、小鳥さんってよからぬ噂があるし・・・?」
「ビッチさんね。」
私が濁した言葉を雅は平気で言って。
「そうちゃんに色仕掛けなんて通用しないよ。アプローチすら届かないから心配いらないよ。ソートは私だから。」
「香澄ちゃん。ちょっとカッコ良く言ってるけどそれソースだからね?」
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