第47話 公佳と和真

「ふ〜、まだまだ暑いな〜。」


夏休みが終わったからといって夏が終わったわけじゃない。

まだまだ残暑が厳しい今日この頃。


「まだまだ残暑ざんしょ?」


くだらないことを言っている飛鳥をスルーして。


「なあカズマ。お前ファッションに詳しい?」

彼女のいるやつなら少しは気にしてるだろう。


「カズくんはジャージ教の信者だよ。」


顔を逸らしたカズマの代りに公佳が答えてくれたが、


「なんだよジャージ教って。どこの新興宗教だよ?」


「たぶんコウも信者なんじゃない?お洒落着なんて持ってないよね?どこ行くのもジャージなんじゃない?」


飛鳥が小馬鹿にするみたいな言い方をしてきた。


「基本、制服かジャージだな。学校、練習、バイトのローテだから必要ないだろ?」

飛鳥と公佳が肩を竦める。


「まあ、総くんの場合は仕方ないか。史華とまともにデートできないくらい忙しいもんね。今まで必要なかったでしょ?」


「さすが公佳、よくわかってらっしゃる。いらない物に金使うのはもったいないだろ?

まあ、でもそう言う訳にもいかなくなったからな。あんなにかわいい史華の隣を歩くんだから、それなりの格好するべきだろ?」


カズマが振り返って俺を見る。

公佳と飛鳥は顔を赤くしている。


「キミ、話には聞いていたけど本当だったんだね。これはフミ毎日悶え死ぬね。」


「でしょ飛鳥。でも史華も耐性ついてきたみたいなの。ふふふって普通に喜ぶだけなんだよ。」


「なあ公佳。俺はソウに弟子入りした方がいいのか?」


「カズくん、私に悶え死ねって言ってるの?」


なんだろうこいつらは。

俺はディスられてるんだろうか?


「なあ、俺の史華の扱いっておかしいのか?俺にはの付き合い方ってのがよくわかってないらしいんだ。この前も史華に普通はそんなに外でキスしないって言われたし。」


公佳が呆れ顔をしている。

飛鳥が唖然としている。

カズマが苦笑いをしている。


「・・・なんだよその反応は。」


「姉のキスシーンを見せつけてられたのは衝撃的だったよ。しかも濃厚だったよね?」


公佳が少し考えながら確認してくる。


「いや、普通だろ?」

確かいつも通りにキスしてたと思うけどな。はじめてだったけど。


「ソウ。大人になったんだな。」

なぜかカズマは遠い目の前をしてる。


「カズマ、まだ大人にはなってないぞ。なかなかそんな時間もないし、泊まりでどこか行ければいいんだけど……公佳、可能か?」


カズマと公佳はどうしてるんだ?


「お泊まり?う〜ん、難しいと思う。お母さんは私達にお付き合いしてる人がいるのは知ってるけどお父さんは知らないし、さすがにお母さんもお泊まりは許可しないと思うよ。」


「やっぱり?ところでお前たちはどうしてるの?」


「黙秘だ。」

「総くん、同じく黙秘だよ。」

「コウ、デリカシーがないでしょ。」


そうか?


そもそも飛鳥にデリカシー云々言われるのは不本意だ。


「まあ、お前達のことはどうでもいいか。飛鳥はファッション詳しいだろ?とりあえず史華と買い物の約束はしてるんだけど、何かオススメはあるか?」


この3人なら飛鳥だろうな。

たまに読モやってるらしいし。


「ん?あるっちゃあるけどフミと約束してるなら任せた方がよくない?たぶんあの子いろいろ想像しながら準備してるよ。」


「うん。雑誌とかネットで調べてるみたい。この前も"総士はスタイルがいいからなんでも似合っちゃうって1人でにやにやしてたよ。」


公佳は呆れ顔で言うけれど、俺を思い浮かべながら選んでくれていたって言うならば素直に嬉しい。


「ん〜。じゃあ全面的に任せるべきだな。史華のことだから変な冒険することもないだろうし。俺の見た目のことは俺以上にわかってくれてるだろうしな。」


「うわっ!ノロケだ。残暑厳しいんだから気温上げないでくれる?」

「飛鳥がその気になれば彼氏の1人や2人はすぐに見つかるだろ?」


顔もスタイルも悪くない。

気遣いのできるいい女だと思うんだけどな。


飛鳥をじ〜っと見ながら考えてると、


「そんな目で視姦しないでよ。」


飛鳥はわざとらしく胸を両腕で隠すような仕草をした。

隣の公佳とは違いボリュームのある飛鳥の胸は腕が当たった衝撃で柔らかそうに揺れた。


「はぁ、お前は綺麗だし気遣いできていい女なのにそういうとこは残念だよな。」


まあ、ノリがいいとも言えなくもないか。


「あ、あぅぅ。も、あんたはそういうとこがダメなんだよ!人をその気にさせるだけさせといて放置の挙句、ほかの子と付き合ってるし。」


飛鳥が聞こえるか聞こえないかくらい小さな声で文句を言っている。


「ほんとに、総くんはダメダメだね。史華が心労で倒れないか心配だよ。……でもカズくんには少し見習って欲しいな?」


「……。」


なんか最近、公佳の様子がおかしいような気がする。この前は執拗にダブルデートにこだわってたし。


「カズマ。」


カズマに近づき小さな声で、


「公佳と上手くいってないのか?俺でよければ相談してくれ。」


これまでにカズマと恋話なんてしたことないけど、史華と付き合ってる今なら少しは役に立てるだろう。


「上手くいってないわけじゃないんだけど……。そうだな。話だけでも聞いてもらうか。」


「了解。」


大したことじゃないことを祈る。

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