第31話 兄弟姉妹会
「そうちゃん、おかえり。」
「おう。」
早朝、中庭でストレッチをしているそうちゃんに話しかけた。
大会が終わったのはネットで見て知っていた。
所属のチーム名とかわからなかったけど、クラブチームの大会とメンバー表で確認できた。
もちろん準優勝したことも大会ベスト11に選ばれたことも知っている。
決勝戦で退場になったこともね。
落ち込んでるかな?って思ったけどそうでもないみたい。
私なりに励まそうと思ってたんだけどな。
でも、せっかくだから実行しちゃう?
頑張ったご褒美とかの名目で。
「そうちゃん。」
私は名前を呼びながらストレッチ中のそうちゃんの背中に抱きついた。
"むにゅ"
「なあ、香澄。ストレッチ手伝ってくれるならもうちょっとちゃんと押してくれ。」
「え?そ、そうちゃん?ちょっと?不感症なの?」
私はそうちゃんの顔を覗き込みながら抗議した。胸をさらに押し付けながら。
「は?お前が軽く乗ったくらいじゃ弱いわ。しっかり押してくれないと。」
「違うよねそうちゃん。乙女の恥じらいをなんだと思ってるの?そんなに感じないの?ご褒美だよ?健全な男子なら喜ぶところだよ?」
そうちゃんは訝しげな顔で見てくる。
至近距離にそうちゃんの顔がある。
少し動けばキスできちゃうくらいだ。
「お前、まさかワザと押し付けてるのか?あのな?さすがに気付いてるぞ。でも、まあ騒ぐほどの感触ではないし。相手がお前だしな。」
な、な、な・・・
「そうちゃん?確かにCを頑張ってDにしてるよ?でもそれなりに感触楽しめるでしょ?しかも私じゃ欲情しないって酷くない?」
一応ね、私モテるんだよ?
学校でファンクラブやら親衛隊やらあるんだよ?お前だしって何?さすがの私もプンプンだよ?
「あのな、たぶん清香の方がでかいだろ?でも清香でも一緒。もちろん姉貴でも。兄妹に欲情するやつなんてほとんどいないだろ?」
妹?ちょ、ちょっと?
「そうちゃん?私そうちゃんの妹じゃないよ?まさかと思うけど、そうちゃん私のこと異性として見てくれてないわけ?」
「おう。」
なにそれ〜!
じゃあ、今までの私の努力は何?
か、家族?
そんなのってひどす・・・ぎ?
ん?まてよ?
妹扱いはさすがにないけど、家族はありだよね。
だって、奥さんだって家族だもん。
一足飛びに奥さんもありだよね?
うん!悪くない。
確かに彼女として青春を謳歌するのも楽しそうだけど、女子高生妻って言うのもあり。
うん。
「仕方ない、そうちゃん。じゃあ、家族になろう。今すぐ!後で一緒に婚姻届もらいに行こうね。」
興奮気味に私はそうちゃんに抱きつき直すと、両手を掴まれひっぺがされた。
「あほ。そろそろ行くぞ。」
そうちゃんはそのまま走り出してしまった。
もう!そうちゃん照れ屋さんなんだから。
少し遅れて私も後を追う。
すると、そうちゃんが不意に振り返り、
「香澄、今日ランチしないか?」
・・・え〜!
♢♢♢♢♢
ふふふふふ〜ん。
どれにしようかな?
暑いし薄着にして、そうちゃんの視線釘付けにしちゃうぞ!
自室の鏡の前で1人ファッションショーをすること1時間半。
そろそろ約束の時間になっちゃう。
「大変!せっかくのそうちゃんとのデートに遅刻なんてあり得ないんだから!」
私は先日デパートで一目惚れした空色のワンピースを着て急いで玄関を出ようとした。
「お姉ちゃん。どこ行くの?」
清香が背後から尋ねてきた。
「うふふ。清香といえども教えてあげる訳にはいかないな〜。」
私は意味ありげに呟いた。
「あ〜はいはい。まあ、行ってらっしゃい。」
あれ?なんだか呆気ないよ。
冷たくない?っとそんなことどうでも良かった。急がなきゃ。
私はエレベーターに駆け込み、待ち合わせ場所の中庭に急いだ。
「はあはあ。お待たせ。」
「なんでそんなに慌ててるのよ。せっかくおめかしが台無しになっちゃうよ。」
ん?んんん?
パッと顔を上げるとそこには綾姉とそうちゃんが立っていた。
「あ、あれ?綾姉?なんでいるの?」
わざわざランチ行くだけなんだからお見送りなんていらないよ?
「あんたこそ何言ってるの?とりあえず回れ右してみようか?」
回れ右?
とりあえず言われるがままにしてみると、
「ぷぷぷ。お姉ちゃん、お兄ちゃんとデートなんて100年早いよ?主役は遅れてくるんだよ?」
そこには私同様、おめかしをした清香がいた。
「な、な、な、なんで〜?そうちゃんとデートの約束なのに〜!」
「いや、デートなんて言ってないだろ。お前勝手に勘違いするなよ。久しぶりに兄弟姉妹会しようってだけだぞ。」
そんな〜。
せっかくそうちゃんとデートができると思ったのに!
もう!思わせぶりなことばっかりし・・・あ、今回は私の思い込みかも?
いや、違う!
あんな風に誘われたらデートだって思うよ!
「で、総士。どこ行く?」
「清香、リクエストあるか?」
そうちゃんは私をスルーして後ろの清香に聞いた。
「私決めていいの?じゃあ久しぶりに"草庵"のかき揚げざる蕎麦が食べたい。」
かき揚げざる蕎麦!草庵のかき揚げはエビがギッシリ入ってて美味しいんだよね〜!
「姉貴も草庵でいいか?」
そうちゃんが綾姉に確認する。
「いいよ。総士の奢りだと思うと一層美味しくなりそうね。」
綾姉は小悪魔のような笑みでそうちゃんに答えた。
「へえへえ。じゃあ決まりだな。」
「ちょ、ちょっとそうちゃん?私にも聞いてよ〜!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます