第25話 恋バナは甘いデザート

「すみません。反省してます。」

食後のコーヒーを持ってきてくれたコウくんに飛鳥がしょんぼりしながら謝っている。


「まあ、気にすんな。」

コウくんは苦笑いしながら給仕してくれている。

「飛鳥あるあるだ。」

これにはみんなが吹き出した。


「あっははは。だ、だめだよコウくん。なんで笑わせにくるかな?すごく納得しちゃったじゃない。」

「全くだ。飛鳥がこんなに反省してる・・・ん?飛鳥?顔真っ赤だぞ?」


私から見ても飛鳥は少しお怒りのようだ。

「コウくん、ちょっとからかい過ぎたみたいだよ?」


「ん?飛鳥怒ってないよな?そんな逆ギレみたいなことしないよな?」

コウくんは去り際に飛鳥の頭をポンと叩いてから仕事に戻って行った。


あ、コウくん"頭ポン"だ、いいな。

・・・ん?あ、あれ?

なんで飛鳥を羨ましく思ってるんだろう?

なんか最近おかしいのかなぁ?


チラッと飛鳥の方を見るとプルプル震えてる。

「子ども扱いして〜!」


私とは違う感情が動いてるみたい。

「ふふふ。」

ちょっとおかしくなって笑ってしまいました。


私が笑ったのが不服だったらしく、飛鳥からジト目を向けられてしまいましたが。

そんな飛鳥がかわいらしい。


「もう、私のことはいいから。」

飛鳥は立ち直りが早い。これは飛鳥のいいところ。


「今日の主役は史華でしょ?」

飛鳥は突拍子がない。これは飛鳥のよくないところ。


「私?なんで?」

私には心当たりがないんだけど?

公佳を見ても、葛城くんを見ても当然のような顔をしている。


「またまた〜、わかるでしょフミ。何のためにここまできたのよ?」

なんだろう?バイトのことでも聞きたいのかな?この中では私しかバイトしてないしな。


「うん。わかった。で、具体的になにが知りたいかな?」

お店の雰囲気なんかは今感じてくれてるだろうし、仕事内容もコウくん見ててもらえればわかるからね。


「え?いいの?もっと嫌がるかと思ってた。

じゃあ遠慮なく聞いちゃうぞ。」

「なんで嫌がるって思ったの?別にいいよ。」


飛鳥は少し考えてから質問してきた。

「史華はいつから好きなの?」


いつからか。仕事内容じゃなくてお店よね?


「う〜んとね。もう随分前からだよ?いつからかな〜?」

はじめて連れてきてもらったのは幼稚園の頃だったかな?


公佳を見ると満足気に笑っている。


「へぇ〜!そうなんだ。じゃあ一目惚れレベル?」

「う〜ん?そう言ってもいいレベルかな?」

職場選びは難しいよね。好きなところならやる気になるもんね。


「フミは慎重派だと思ってたから意外かも。」

慎重派だよ?


「じゃあ、次の質問ね。どんなところが好き?」

好きなところか〜。


「そうだね。あたたかいところかな?優しい雰囲気あるでしょ?包まれてるみたいで安心できるし。成長のためには緊張感が必要ってわかってるけど、はじめてだからじっくりいきたくて。」

なんだろ?3人とも固まってない?

考えが甘いって思われてるのかな?


「へ、へぇ〜。それは最高の評価だね。でもライバルもいるわけじゃない?心配にならない?」

「ライバル?みんな仲間って感じだよ。すごく良くしてもらってるよ。」

先輩達はみんな良くしてくれてるよ?


「そっか。友達だって言ってたもんね。じゃあ最後の質問にしようかな?」

「最後ね。いいよ。」

やっぱり時給とか気になってるかな?


「いつ告白するの?」

飛鳥が顔を近づけて囁くように聞いてきた。


「え?告白?私まだ今の時給に不満ないよ?」

確かにオーナーぬは3ヶ月は使用期間って言われてるけど仕事覚えてる最中だし不満はないよ。


「はい?時給?フミ何、言ってるの?私はいつコウに告白するのかって聞いてるんだけど。」

コウくんに告白?


「え?コウくんに?そんなことコウくんに言ってもらうことじゃないし。不満に思ったら私からオーナーに言うよ?」

さすがに何から何までコウくんに頼れるわけないじゃない。


「フミ?私はね、いつコウに付き合って下さいって告白するのか聞いてるの。あんた絶対勘違いしてるね。コウのこと好きだよね?」


「え?は、はい?わ、私がコウくんのこと?

な、なんでそんなことになってるの?告白?

いやいや、ちょっと飛鳥待って。私がコウくんのこと好きって、どうしてそうなってるの?」


「え?どう見ても聞いてもそうとしか思えないよ。フミまさかの無自覚?ちょっと、キミはどう思う?」


気が動転している私を無視して飛鳥は公佳に聞いている。


「うん?史華には自覚ないかもしれないけど私は黒だと思うなぁ。まあ、ちょっと願望入ってるかも。」


「え?公佳?」


無自覚?確かにコウくんのこと尊敬できる人とは思ってるけど異性として好きかと言われると・・・。


私がしばらく俯いていると、


「焦る必要ないんだし、そのうち自分で気づくと思うよ。多分、早々にね。」


♢♢♢♢♢


「まだいたの?」


バイトが終わり店外へ出るとカズマ達がいた。


「おう、お疲れ様。一緒に帰ろうと思ってな。」

「一緒にってお前ら歩きだろ。俺自転車だし。」


みんなしてクスクス笑ってるのが気になる。

ん?違うな。よく見ると吉乃さんが飛鳥の後ろに隠れるようにしている。


「てなわけだ。俺が飛鳥送ってから公佳送るから、お前はいつも通り史華送ってくれ。」

いやいや、カズマおかしいだろ。

ってツッコミを入れようとしていたら、


「ちょ、ちょっと。それ変じゃない?そ、それならコウくんが飛鳥送って、葛城くんが私達送ってくれればいいことじゃない。」

なぜか吉乃さんが熱弁を奮ってる。


ちょっと傷付く。


けど、まあその通りなんで、


「カズマ、吉乃さんに賛成。俺が飛鳥送ってくから吉乃姉妹頼むわ。」


飛鳥の方へ近づくと飛鳥は自分の体を抱きしめて、

「いやコウ。私がかわいいからって狼さんになるつもりね。危険を察知したので拒否します。コウは史華を送りなさい。」

若干イラッとする。


「いや、そんな理屈なら吉乃さんの危険だろ。それならカズマが3人送ってくれよ。」

なんか疲れてきたので早く帰らせて欲しくなってきた。


「ふ、ふん。どうせフミの方がかわいいわよ。悪かったわね!」

「なんだよお前、めんどくさいやつだな。吉乃さんが嫌でなければ俺が送るよ。行こうか。」

俺はそう言って自転車を押して歩き出した。


「え?ちょっと待ってコウくん。じゃあ飛鳥

葛城くんまたね。」

吉乃さんがついてきてくれそうなので俺も右手をヒラヒラさせてバイバイをした。


「ごめんねコウくん、私バイト上がりでもないのに送らせちゃって。」

吉乃さんが俺の隣にきて開口一番謝ってきたので、

「ん?役得役得。吉乃さんと帰れて嬉しいよ。」

かわいい子を家まで送るというのは一つの名誉であると言えよう。

ん?吉乃さんは固まってる。

「どうした?」

「はっ⁈も、もう!コウくんはたまに素でそういう恥ずかしいこと言うよね。」

吉乃さんがそっぽ向いたまま追いついてきた。


「別に恥ずかしいことなんて言ってないだろ?」

セクハラに該当するような単語は出してないだろ?

女の子はよくわからん。

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