第19話 突撃!吉乃家

「はい。こちら現場の聖川です。私達は現在、」ポカっ。

はい、みやびちゃんからいつものいただきました。


「事件現場じゃないんだからやめてよ。」

そう、ここは史華ちゃん家の前です。

ある意味事件です。

重厚な門構え。

防犯カメラ。

門の中から犬の鳴き声。


「みやびちゃん、ある意味事件だよ。何この立派な家。びっくりだよ。」

「まあ、確かにね。」

2人揃って開いた口が塞がらない。


とりあえずインターホンを押す。

『ピンポーン』


しばらくすると『はーい』と史華ちゃんらしき声がしたので、


「史華ちゃん、きたよ〜。」

とインターホン越しに話しかけた。


『あ、は〜い。ちょっと待ってね。史華〜、お客さんだよ。』

あ、妹さんだった。


しばらくすると犬ぬ鳴き声と共に史華ちゃんがでてきた。

あれ?ドーベルマンじゃなくてダックスフンドだ。


「いらっしゃい。迷わなかった?」

史華ちゃん、さすがにこの家見失わないよ。


「うん、迷いようがなかったよ。ランドマークだね。」

うん、次来た時も迷うことはないよ。

史華ちゃんの案内で自宅にお邪魔すると、リビングに通された。


「いらっしゃい。」

リビングには史華ちゃんそっくりの女の子が優しい笑顔で出迎えてくれた。


「香澄ちゃん、雅。妹の公佳よ。」

「香澄ちゃんと雅ちゃんね。史華やコウくんから話聞いてるよ。」

あ〜、かわいいな〜。

そうか、そうちゃんはこの子を好きになったんだ。

なんかわかる気がするな。

落ち着いた雰囲気、優しい笑顔。


「今日は突然ごめんなさい。無理聞いてもらってありがとう。」

私も精一杯の笑顔で返してみる。


「全然、すぐに見れるように準備しておいたよ。全試合見てる時間はないからディスクに焼いておいたから帰りに渡すね。」


テーブルの上を見るとファイルの山が築かれていた。

「こっちは雑誌とかのスクラップ。数はあまりないんだけどね。」

いやいや。

相当な数だと思うよ。


とりあえずすぐそばにあったファイルを開くと葛城くんの写真だった。

あれ?ひょっとして葛城くんのがメイン?

まあ、それは仕方ないか。

そうちゃんの写真を探してパラパラやっていたら、

「コウくんも結構写ってるよ。代表歴が少しだけカズくんの方が長いから、その分切り抜きもカズくんの方が多いかも。」

そうなんだ。

私は一心不乱にそうちゃんを探す。

すると、試合中の写真だろうか、背番号21を付けたそうちゃんを発見した。


そうちゃんだ!代表のユニフォーム着てる!

しかも本物だ。

私はその姿に釘付けになる。

一向に動かない私を見て3人が笑い出した。


「香澄ちゃん、見過ぎ見過ぎ。真剣すぎて怖いよ。」

みやびちゃんがうれしそうに揶揄ってきた。


「せっかくだから試合見ようよ。アジア予選の準決勝でコウくんがMVPに選ばれた試合。」

公佳ちゃんがデッキを操作して再生してくれた。


「すごい、実況付きで試合してる。」

不思議だ。そうちゃんがテレビの中で試合してる。相手は外国人だ。

そんな中でもそうちゃんは負けてない。

ううん、贔屓目なしでそうちゃんが1番輝いている。


「この試合ね。ホントはコウくんスタメンじゃなかったんだって。でもウォーミングアップ中に怪我した人がいたから急遽出たらしいよ。で、最後まで見るとわかるけど試合を通して大活躍。この試合以降ポジションを取ったみたい。」


「う〜ん、運も味方につけたか。やるな纐纈くん。」

公佳ちゃんの説明を聞きながらみやびちゃんが感心している。


ふふふっと笑いながら公佳ちゃんが、


「コウくんは真面目だし、努力家だから。コンディション調整に失敗したなんて聞いたことないよ。」


そうだ。

この子は私が知らない今のそうちゃんを知っている。

史華ちゃんもそうだ。

私の知らないそうちゃんを知っている。

私は今のそうちゃんを知らない。

ねえ、そうちゃん。

迷惑かけないからそうちゃんのこと教えて?

昔みたいにいっぱいお話ししようよ。

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