第18話 思い出の喫茶店
そうちゃんが日の丸を背負った。
衝撃的だった。
驚きよりも嬉しさでいっぱいだった。
『高校選手権で国立に行く、Jリーグに行って活躍する、ユヴェントスに行ってビッグイヤーを掲げる、ワールドカップに出る』
中学に入学した時に私に話してくれた、そうちゃんの夢。諦めてなかったね。
あの日はずっとそのことを考えていた。
で、次の日史華ちゃんに会って思い出した。
『まあ、頑張ったらご褒美あげるからね。』
「史華ちゃん!」
思わず大きな声出してごめんなさい。
史華ちゃんビックリ。
クラスのみんなもビックリ。
教室で騒いじゃいけないんだぞ?
「どうしたの香澄ちゃん?」
みんなが注目してしまったものだから史華ちゃんは控えめに話してきた。
「まずは大きな声でごめんなさい。で、本題はですね。昨日の体育の時間の"ご褒美"についてなんですが、私頑張ったと思うのでご褒美を頂戴したいなぁ、なんて思ったりしてるわけなんですよ。」
悪徳商人の如く、両手をスリスリしながら史華ちゃんに詰め寄る。
「ああ、そのことね。ふふ、昨日何も言わないから忘れてるのかと思ってたよ。ん〜、どうしようかな〜。雅、香澄ちゃん頑張ってた?」
いつのまにか私の背後にみやびちゃんが立っていた。
気配を消しながら近づくとは!
「う〜ん?まあいつも通りかな?でも私も気になってるから知りたいかな?」
さすがは親友!
しっかりと私をサポートしてくれる。
「じゃあ、ご褒美として。」
史華ちゃんが少し考えながら話し始めた。
「私、先週からバイトはじめたんだけどね、そこでね、纐纈くんもバイトしてるの。一応、本人から香澄ちゃんに言ってもいいって確認取ったからね。」
バイト!そうちゃんがバイト!
何のバイトだろ?接客かな?史華ちゃんと一緒ってことは肉体労働じゃないよね?
「史華。何のバイトはじめたの?」
みやびちゃんそれ!私もそれを聞きたかったの!
「喫茶店のウエイトレスだよ。纐纈くんはキッチンもホールもやってるよ。」
喫茶店!
私はスマホを出し"喫茶店 制服"と検索。
検索結果を史華ちゃんに見せ、
「史華ちゃん!そうちゃんはどんな格好してるの?制服だよね?エプロンだけ?まさか肌エプロンじゃないよね?」
すかさずみやびちゃん得意のチョップをいただきました。
「どうどう。」
「私、馬じゃないよ⁈」
もう想像しただけで興奮・・・。
そんな中、史華ちゃんは私のスマホを操作しながら「う〜んとね。」と私の要求に応えようとしてくれている。
おもわず、
「ぎゅ」
「きゃ、何?」
可愛すぎる史華ちゃんを抱きしめると小さく抵抗してきた。
「史華ちゃん、可愛い。」
思わず頬ずりしたくなるほどだがそこは自重しておこう。
「ほらほら。史華が困ってるから香澄ちゃんは離れなさい。」
みやびちゃんに強引に引っぺがされてしまった。
史華ちゃんが少し涙目だ。
そんなに怖かったの?
「もう!香澄ちゃん、いじわるするなら教えてあげないよ?」
みやびちゃんの影に隠れながら史華ちゃんが訴えてきた。
「ごめんなさい。反省してます。とりあえず落ち着くので続きをお願いします。」
平謝りです。
ごめんなさい。
史華ちゃんは再び私のスマホを操作して「これかな?」と言って私に返してきた。
そこには白シャツに黒のベストを着た大人びた感じのモデルさんが写っていた。
私の脳内ではすでにそうちゃんの顔に入れ替わってる。
"見たい!"
「史華ちゃん、どこの喫茶店?行ってもいいかな?」
再び史華ちゃんに詰め寄る。
ちょっとだけ遠慮したよ?
「どうかな?香澄ちゃんが後で知ったら騒ぐといけないから教えていいよとは言われたけど・・・。まあ、私のことを教えるのは問題ないよね?La Vecchia Signoraっていう喫茶店。」
知ってる!小さい頃、そうちゃんのお父さんに連れてってもらった。
「そっか。うん、行ったことあるよ。」
とりあえず行くのはやめよう。
まだ気軽にいける場所じゃないや。
「ん?香澄ちゃん、どうしたの?今日行ってみる?付き合うよ。」
みやびちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。
「ん、ううん。やめてこうかな。史華ちゃん教えてくれてありがとうね。」
教えてくれた史華ちゃんにもお礼を言いつつ、更なるお願いをしてみる。
「ねぇ、史華ちゃん。図々しいお願いだとは思うんだけど、史華ちゃんの妹さん。そうちゃんの代表の時の映像とか切り抜きとか持ってないかな?」
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