第12話 ホントは優秀なんだよ

「え?そうちゃん?」


そうちゃんが帰り際に頭ポンをしてくれた。

なに?これが噂に聞く頭ポン?

ただ頭に手を置いただけだよ?

ローコストだよ?

なにこの幸福感!

うれしさが込み上げでニマニマしてしまった。


「中途半端に優しくするな〜!」

なぜかみやびちゃんが叫んでいる。


「み、みやびちゃん?いきなり叫ばないでよ。」

「はぁ、香澄ちゃんも単純だな〜。これぞ恋する乙女って感じなんですかね?さっきまでの悲壮感はどこにいったの?」

ん?悲壮感?

そんなの漂ってたっけ?


「それにしても纐纈くんと史華の妹が知り合いだったなんてね。世間は狭いね。」

みやびちゃんが廊下の方を見ながら言った。


「それだよみやびちゃん!」

「え?それ?」

あ、ごめんね。声大きかったね。


「おかしいよ。

絶対におかしいよ。

そうちゃんだよ?

そうちゃんが告白したんだよ?

なんで断るの?

みやびちゃんもそう思うでしょ?

史華ちゃんの妹さん、病気だったんじゃないかな?

だから間違ってそうちゃんの告白断っちゃたんだよ。

絶対そうだよ。

今頃後悔の念に苛まれてるんだよ。

ねぇ、みやびちゃん

・・・ん?みやびちゃん?なんでそんな残念な子を見るみたいな目してるの。


「流石ホントは最優良物件。わかってくれてありがとう。」

え?ため息混じり?


「前に纐纈くんにも言われたんだけどね、仮に纐纈くんが超イケメンだったとしても断られたと思うよ。纐纈くんのこと抜きにして考えればわかるでしょ?香澄ちゃんの中で纐纈くんはオンリーワンだけど、私の中ではその他一般だよ。」

「その他一般にしてはそうちゃんとみやびちゃんって息ピッタリだよね。たまに、ホントごくヤキモチ妬いちゃうよ。」


そう。

なぜかそうちゃんとみやびちゃんは息ピッタリの名コンビなんだよね。


「それはね。必要に迫られてなんだよ香澄ちゃん。」

ニコニコしてるはずのみやびちゃんの顔が怖い!


「ん?ん?必要なの?そうちゃんとのアイコンタクトが?」

「香澄ちゃん。よく考えてみてね。私と纐纈くんが一緒にいるってことは?」


みやびちゃんとそうちゃん?

まさか!まさか!

「実はもうそうちゃんと付き合ってるの⁉︎」

「そうやって暴走する香澄ちゃんのせいでしょうが!全くもう!纐纈くん絡みだとすぐに香澄ワールドに入っちゃうんだから。」


なるほど。

私対策として、みやびちゃんとそうちゃんはコンビを結成したらしい。

「ま、それはいいとして。香澄ちゃん帰ろうよ。」

史華ちゃんもそうちゃんも帰ってからだいぶ時間が経っていた。


「そうだね。帰ろうか。」


荷物を鞄へしまい帰ろうとしたところで

「聖川さん、平川さん。ちょっと待って。」と呼び止められた。


振り返えると男女数人が近づいてきた。


「良かったら親睦の意味も込めてこれからカラオケに行かない?今まであまり話す機会もなかったし、たまにはどうかな?」

え〜っと、確かみやびちゃんがイケメンって言ってた白石くんだったかな?


「ごめんなさい。テストも近いし私は今日は早く帰りたいんだ。」

私は申し訳なさそうな演技でこの場を切り抜けることにした。


「あ、じゃあファミレスで勉強会でもしようか?それなら聖川さんも問題ないよね?」

う〜ん。簡単に引き下がってくれないか。

みやびちゃんを見ると私をじっと見つめている。

え?みやびちゃん。そんな潤んだ目で見られると照れちゃうってね。


うん。行きたいんだね。


仕方ない。いつも迷惑かけている親友のために一肌脱ぎますか!


「あまり遅くなると怒られちゃうから少しだけ。みやびちゃんは?」

「私も大丈夫だよ。」


みんなを代表して白石くんが

「じゃあ行こうか。」とみんなに声をかけた。

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