第6話 聖域
時間を確認する。
17:13分。
「お〜、あまり時間ないな。ヤバイヤバイ。」
冴子さんに引き止められてた分、時間をロスしてしまい事前に予定していたコーチや先輩達への挨拶回りができなさそうだ。
とりあえずロッカーに駆け込み、急いで着替えてミーティングルームに入った。
「あ、コウくんおはよう。慌てて入ってくるなんて珍しいね。やっぱり自転車だと時間厳しい?」
小柄なおっとり系な少女が話しかけてきた。
どうやら俺が自転車でここまできたことを彼氏から伝わっていたらしい。
「いや、当初の予定だと余裕だったんだけど帰り際に先輩に捕まっちゃって、・・・吉乃、なんかめちゃくちゃ綺麗になってない?いや、元々可愛かったけど高校生になって一気に花開いたっていうか。高校デビュー?違うな。こういう時ってどう表現するんだ?」
俺が自分の世界に入って考えてると吉乃は一瞬目を大きく見開いた後、優しく微笑みかけてくれた。
「ありがとう。コウくんのそうやって女の子を褒めてくれるところとても素敵だと思うよ。」
「まあ、スケコマシとも言うけどね。」
せっかく吉乃との甘いひと時に邪魔してくれやがって!
「失礼だな
ポニーテールの似合う飛鳥は美人には違いないが男よりも同性の方にモテそうだ。
実際、中学時代は後輩にお姉様と言われてたとか。
吉乃も飛鳥もジュニアからのチームメイト。
うちのクラブは男女が隣のグラウンドで別々に練習している。
中学2年の時にカズマに誘われたフットサルの大会で一緒にミックスチームで参加してから仲良くしてる。
で、半年前に吉乃に告白して玉砕しましたと。
「2人とも桜華女子だっけ?飛鳥がモテまくりそうだな。」
「そういうアンタは翔栄なんだって?受験のとき全然教えてくれなかったもんね。で、噂の彼女も一緒らしいね。」
悪人ヅラした飛鳥さんが楽しそうに聞いてきた。
「幼馴染な。ホント情報統制してた意味なかったわ。身近なとこから漏洩してたからな。
ということで、ここだけはバレるわけにはいかないからカズマくん、頼みましたよ。」
いつの間にか吉乃の隣にきていたカズマに話しかけた。
「いや〜。まじびっくりしたわ。キミとは違ったタイプの美人だったけど嫉妬の嵐に巻き込まれたってのを納得できたわ。今日一日ですでに噂になってたからな。」
「あら和真くん。彼女の前で他の女性を褒めちぎるのはどうかと思うよ。」
吉乃が上目遣いでカズマに注意している。
あざといくらいにかわいい。
「はいはい。惚気はその辺にしなさいよ。コウが悔しさで発狂するわよ。そろそろミーティングの時間だから座ろうよ。」
♢♢♢♢♢
「まさか初日からレギュラー組と試合とはね。俺たちにとっては有難いな。ソウ、受験で鈍ってないだろうな?」
「受験期間も毎日走ってたし、春休み中も個サル行ったりしてたから大丈夫だ。一気にポジションいただきましょうかね。」
この試合で活躍できればコーチの目に留まりレギュラー争いでも優位になる。と言ってもコーチ陣はジュニアの時からほぼ同じだからいまさらなんだけどね。
レギュラー組もほとんどがジュニアでの元チームメイトだ。
俺のポジションはボランチでカズマはセンターバック。
お互いセンターポジションでチームを支える背骨だ。
「カズマ。やっぱり最初は強烈なインパクトを与えるのが大事だと思うからガツンといかせてもらうぞ。なんでフォローよろしく。」
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