第4話 お誘い
お偉いさん達のありがたいお話しに続いて、新入生代表の首席さまのご挨拶。
壇上にはさっきまで目の前でワーワー騒いでた幼馴染が余所行きの姿で挨拶をしていた。
「ソウ。聖川さんって美人なだけじゃなくてお勉強もできるのか?」
隣に座っていたカズマが聞いてきた。
「タチが悪いことにスポーツも万能だ。ラノベのヒロインみたいだろ。」
「まじか。悪いのは男の趣味だけってことか。」
カズマはクックックと楽しそうに笑いながら俺をイジってきた。
「ホントに幼馴染だからって好きにならなくてもいいのにな。」
ため息混じりで呟いた。
教室に戻り、クラスメイトを見回してみると見知った顔がチラホラ見受けられる。
まあ、ただの顔見知り程度だけど。
同じ中学だったやつらの俺に対する態度は男は妬み嫉妬、女は腫れ物扱い。
幼馴染案件ですので。
「なあソウ。うちのクラスにお前の同中だったやつもいるんだろ?お前ぼっちだったの?」
朝から俺としか絡んでないカズマに言われるのも釈然としないんだが・・・。
「あ〜、説明面倒くさいからぼっちってことで。」
「いや!違うなら否定しよ!キミに言うぞ。」
いやいや。なんでそこでお前の彼女が出てくるんだよ。
「とりあえずだな、カズマは聖川に注意してくれればいいから。間違いなくお前に接触してくるから。華麗なステップで躱してくれよ。」
♢♢♢♢♢
「じゃあカズマ、後でな。」
俺は練習グラウンドまで自転車で移動なので足早に教室を後にする。
自転車に跨り校門を出ようとしたところで、
「ソウくん待って!」と声を掛けられた。
冴子さんが小さく手を振っていた。
うん、可愛い。
やっぱり可愛い。
まじ可愛い。
「冴子さん、デートしましょう。」
その姿を見て思わず口から出てしまった。
「ごめんなさい。ほんとにごめんなさい。無理です。絶対無理です。ソウくんとデートなんて自殺行為だから。」
そんな真剣に言わないでよ。
「で、どうしたんですか?ちょっと急いでるんで時間かかりそうなら後日でお願いできますか?」
俺の計算だと今から出ても20分くらいしか余裕がない。
「あ、そうなの?じゃあ手短かに終わらせるので返事は"はい"で答えてね。私は今サッカー部のマネージャーをしてるんだけどソウくん、入ってくれるよね?」
冴子さんはあざとく上目遣いで俺を見つめてくる。
「冴子さん、すんません。俺クラブチームに所属してるんすよ。なんでサッカー部には入れません。それにアイツもここにいるんすよ。冴子さんも中学時代みたいになるのは嫌っすよね?ということでお願いを今度デートしよに置き換えた上で"はい"と返事させてもらいます。」
簡単に引き下がってくれると思い、ペダルを漕ごうとした俺に冴子さんが食い下がってきた。
「ソウくん待って。暇な時に出てくれるだけでもいいから。それだけでもウチの部員の刺激になるし。それに昔みたいなことになりそうになったら私がちゃんと間に入るから。」
今度は真剣な表情でお願いされた。
「冴子さん、すんません。その答えはNO一択です。仮に冴子さんが付き合ってくれるからって言ってくれても覆りません。」
「ソウくん・・・。私諦め悪いんだ。例えソウくんにお願いしてるのを誰かに見られても"はい"って言うまで諦めないよ。」
おっとり美人の冴子さんの意外な一面だった。
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