第3話 トラブルメーカー
そうちゃん、サッカー続けてたんだ。
よかった。
中学時代、間接的ではあったけれどわたしのせいでサッカー部を辞めてしまった。
小さい頃、一緒に観たw杯。
そうちゃんは目を輝かせてみていた。
可愛かったな〜。
私が淡い思い出に浸っていると、
「香澄ちゃん、香澄ちゃん!なにしてるの?」
そこにいたのは黒髪ロングの女の子。
「あれ?みやびちゃん?なんでいるの?」
そうちゃん、葛城くんの姿はすでにない。
私の親友がそこにいるだけだった。
「なんでじゃないよ。全然教室こないから探しにきたんだよ。香澄ちゃんこそなんで他所の教室にいるの?もう時間ないから体育館いくよ。」
逃げられた。しっかり葛城くんまで連れていった。彼さえいれば根掘り葉掘り聞けたのに!というか、ラストチャンスだった?この間に口止めされてる?私そうちゃんの勇姿見たいよ?
そんなことを考えていると脳天に鈍い痛みが走った。
「てい!」
それはみやびちゃんの鮮やかなチョップだった。
「痛いよみやびちゃん!」
私は涙目で痛みを訴えかける。
「痛い目見ないとわからないでしょ?周り見てみなよ。注目の的だよ?そんなんじゃまた纐纈くんに迷惑かけるよ。ほらほら行くよ。」
みやびちゃんに脇を抱えられながら私は教室から引きずり出された。
私の小学生の頃からの親友。
そうちゃんのことになると周りが見えなかったり、ポンコツになったりする私のお目付役。ホント、いつも感謝してるよ?
だから引きずるのはやめようよ。
「とりあえず香澄ちゃん。一回教室戻るよ。そのウルウルお目々をどうにかしようか。」
「ん。みやびちゃん大好き。」
♢♢♢♢♢
とりあえず脱出に成功した俺はカズマに事の次第を説明した。
「カズマ。あれが前に話した幼馴染だ。なのでアイツにはチームのこと、俺のプライベートなことは一切しゃべらないでくれ。」
両手を合わせて頼み込む。
「あ〜、でも聞いてたのと違って悪い印象ないぞ。それほどのトラブルメーカーとも思えないけど?」
カズマは思案顔で答えた。
「アイツ自体はな。ただアイツの存在で周りがトラブルを巻き起こすんだよ。だから1番の対策は近づかないことなんだよ。」
そう。香澄の良さなんて俺が1番わかってる。
それが人を惹きつけて周りが勝手に暴走する。
そして被害の矛先は俺に向く。
「にしてもスゲー美人だな。噂以上だわ。可愛いタイプのキミとは違った魅力があるな。あの子を拒否する理由がわからんわ。」
カズマがニヤニヤしながら覗き込んでくる。
「いまお前が理由言ったろ。吉乃とは違ったタイプだって。それが理由だよ。贅沢なことかもしれないけど美人なら誰でもいいわけじゃないだろ。」
「だな。」
「そういうこと、まあそろそろ体育館行こうぜ。時間あまりないだろ。」
入学式は9時からの予定だからそろそろやばい。
体育館への道すがら、
「まあ、そういう訳で協力たのんます。」
カズマにもう一度念押しをしておいた。
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