第2話 手がかり

春休み中に自転車で高校まで行ってみた。


約40分。


交通費もバカにならないしトレーニングにもなるから一石二鳥。


幼馴染はバスと電車で通学するだろうから所属チームや練習場所がバレる心配もなさそうだ。


小学生の頃から始めたサッカー。


中学の途中にあることがキッカケで部活をやめクラブチームに所属している。

高校生になったので明日からはユースチーム所属になる。


幼馴染に対して俺の個人情報は一切漏らさない。


バレたら最後、平穏な生活が送れなくなってしまう。


「俺はあいつと離れたい」


♢♢♢♢♢


「新入生の皆さん、掲示板でクラスを確認してから教室に移動してください。」


在校生の先輩が新入生の誘導をしている。


掲示板の前の人集りの後ろからクラスを確認すると俺の名前は1-Bにあった。


一通りクラスメイトを確認してみると見知った名前がチラホラ。


しかし、幼馴染の名前はなかった。


「よし!」


心の中で小さくガッツポーズをした。


「お〜い。そこの新入生。確認終わったら教室入ってね〜。」


どうやら俺に言ってるらしいので、

「あ、はい。」と返事をして相手の顔を何気に見たら知ってる顔だった。


「あれ?冴子さんじゃないっすか。おはようございます。久しぶりっすね。」


「ソウくん?久しぶり。高校うちだったんだね。・・・とりあえず、教室入ろうか。」


2つ年上の姉貴の親友の冴子さん。

見ているだけで癒される。


「じゃあ、またね。」


「は〜い。」とさっさと教室に行こうとすると、


「ソウくん、話したいことあるから近々時間作ってよ。綾音に連絡しておくからさ。」


「告白っすか?冴子さんならこの場でOKっすよ。」


ちょっとだけ背伸びをして茶化してみたが、


「あ、ソウくんに告白ってあり得ないから。マジない。命狙われてたくないし。」


うん、知ってる。

昔、俺が憧れてただけでも殺意向けられてたもんね。ゴメンナサイ。


「俺が言うのも何ですけど、面倒ごとは勘弁っすよ。」


♢♢♢♢♢


教室に入ると席は6割方埋まっていた。

座席表を確認すると俺の席は窓側の1番後ろ。

心地よい陽射しに包まれながら目を閉じていると、ふと人の気配に気づいた。

目を開けると俺の顔を覗き込んでいる男がいた。


「お、やっぱりソウだ。お前も翔栄だったのか。同じクラスだぞ。よろしくな。」


こいつはチームメイトの葛城和真かつらぎかずま


「お〜、カズマか。よろしくな〜。・・・ひょっとして吉乃もか?」


「いや、キミは桜華だけどひょっとしてまだ根に持ってるのか?」


吉乃公佳はカズマの彼女で俺が半年前に振られた相手。


「いや、根に持ってないし普通に話してるって。みんながどこ行ったか知らないから確認だけだよ。」


訝し目で見てくるカズマに答えると、視界の端で教室の扉が開くのが見えた。


「そうちゃん!なんで自転車通学なの!」


幼馴染は俺の席を叩きながら文句を言ってきた。


「なんで?自転車で通える距離だからだろ。」

「私、通えないよ!」と膨れっ面の幼馴染。


そんなやり取りをしていると、カズマや他のクラスメイトが幼馴染に注目しているのに気づいた。


ユダンシタ。ミンナミテル。


そんな空気を感じながらも幼馴染は俺の隣にいるカズマに気づいた。


「はじめまして。聖川です。ひょっとしてそうちゃんの友達?」


幼馴染は愛想よく挨拶をした。


「しまった!」と思ったが時すでに遅し。


「うん、ソウの中学時代からのチームメイトの葛城。ひょっとして噂の幼馴染ちゃんかな?聖川さんも同じクラスなの?」

の言葉で幼馴染の瞳が輝いた。


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