第2話 オンユアマーク



鵜飼うかい永四郎えいしろうは平凡な少年であった。


身長は160cm強、並の上。

体重は50kgを超えたほど。


取り立てて体格に恵まれたわけではないが、サッカーと水泳を嗜んでいた。


また、勉強はなかなかできた。


よわい13歳の春。


名門中学の門を叩く。



ここでとあるスポーツ、そして仲間たちと、かつてない運命的な出会いを果たすことになる。



スポーツ。

その名を…。




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「ハンドボールというんだ」




永四郎の言葉に沈黙が横たわった。


「…………………」



こいつ、たまにボケるんやな。

同級生の男は今回、意地でも、ツッこまないと決意した。




「……………で」


しかし耐えかねた。同級生こと、赤江あかえは指摘した。


「オチは?」


永四郎は仏頂面で返す。


「ない」


「アッアッアッ、アホかーい!」




「ハンドボールってなんやねん。球技ってとこしか共通点ないやんけ」


少し関西弁が入っている。


「いや、本当に初めはハンドボールをやろうとしてたんだ」




穏やかな視線。赤江も窓に顔を向けた。


広く晴れわたる青空。白く千切れた雲が流れてゆく。




「校舎の中でスカウトされたから」


「じゃあなんで、ハンドボールせんかったんや」


「そりゃあ」


永四郎にとっては当然のことであった。


「こっちの人に先に誘われてたから」


正しくは自分の母親である。


「まさか顧問と知り合いとはね」




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歴史を感じさせる古びた校舎。廊下の窓からは広がる校庭がよく見える。


放課後を待ちわびたサッカー部員が蹴りあげた、空高く舞い上がるボール。


なんとはなしに二人は目で追った。


落下しはじめたボールのその先、水色の光がゆらめく。


一般的にはプールと呼ばれる巨大な水たまりである。


サッカーのものとは違うボールがたゆたっていた。



ザラザラした表面に黄色と青の美しい配色。

馴染みのないあのボール。



果たして自分は投げられるだろうか?

プールを泳いで、競い合うことが出来るのだろうか?


赤江は考えていた。隣の男よりは上手く投げてやろう。


永四郎もまた、同じことを考えていた。

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