青春の残響

とくれせんた防備

その桜簾を抜けて

第1話 プロローグ




生命を燃やし尽くすかのような苛烈な泳ぎ。

涼やかなプールを永四郎えいしろうは駆け抜けた。


深くまで侵入を許した敵陣が華やかに躍る。

彼奴きゃつを討ち取らんと鬼たちが舞い戻る。


だが守備の選手鬼たちが戻るより、味方のパスが永四郎に到達するほうがどうしようもなく早い。


この競技における5メートルは、あまりにも長い。


自分の前に入られただけで致命的。

であるのに、手を伸ばしても触れられないその距離は永遠すら感じさせた。


守備の選手、0。

攻撃の選手、1。

1-0イチゼロの見事なカウンターであった。


高く掲げたボールは黄色。

GKゴールキーパーとの対峙。

腕が振られる時計の振り子


一度。

二度。

三度。


意識の間隙を縫い、永四郎から放たれた球が深くネットに突き刺さった。





僕たちが駆け抜けた

あの、日々。


プールにおける球技。


青春に懸けた少年たちの、

迷走と、情熱の。


物語。

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