第6話
「そう言えば、まだ名前を決めてなかったな。」
一応前世の名前があるが、それを言うと話がややこしくなるので黙っておく。
「ルドなんてどうだ?」
エルバが唐突に言った。
それを聞いたウルは何度か頷きいった。
「いいな、それ。名前はルドで良いか?」
その名前に違和感はなく、スっと体の中に入るようだった。
「なんか不思議としっくりくる名前だね。僕はルド。これから宜しくお願いします。」
そう言ってウルとエルバに頭を下げた。
ウルとエルバはニッコリと笑い、宜しくと言った。
「名前も決まったし、そろそろ飯にでもするか。」
ウルがそう言って席を立とうとする。
しかし、席を立とうとするウルをエルバが肩に手を置いて座らせる。
「その前に、もう一つ大事な確認がある。ルド、お前はアマンダと出来るか?」
それは、ここに来る道中で聞いたセリフだった。
今ならそれの意図している事が分かり、答えられる。
「出来ます。」
それを聞いたウルとエルバは顔を見合わせた後、喜んだ。
「本当に良かった!あいつには幸せになって欲しかったからなぁ…!」
「全くだ。あいつは気が利く良い奴だからな。」
一頻り喜んだ後は、エルバがニヤつきながら寄ってくる。
「街を歩いて時キョロキョロしてたよな?他にもいい感じの奴は居たか?街の奴ら皆んなソワソワしてたぜ。」
そうだったのか。そんな素振り全くなかった。
「なるべく旅人は注視しないって言う暗黙の掟みたいのがあるんだ。好奇の目に晒すのは失礼だからな。」
ウルが補足するように教えてくれる。
「で、正直どうだったんだ?誰一人居ないなんて珍しくないから気にせず言えよぉ。」
相変わらずニヤニヤしている。
正直言ってもいいのか悩む。何故なら、全員と言っても過言ではない。
しかし、色々説明を聞いた今ならわかる。
自分は異常なんだと。
世界が違うから価値感が違う。
言えばどんな扱いになるかわからない。それこそ、実験体にされるかもしれない。
けど、1人でこの問題を抱え込むより、ここまで優しくしてくれた彼等2人を信じるべきだと思った。
「実は…」
エルバは相変わらずニヤニヤしており、ウルは興味津々といった様子で次の句を待っている。
「ほとんど全員いけると…思い……ます。」
その言葉を聞いたウルとエルバは、固まった。
数秒の間があり、ウルが言葉を発する。
「本気で言ってるのか…?」
言わなければ良かったと後悔した。なんて短絡的なんだと。優しくされて警戒心が解けきっていた。
しかし、そんな後悔は必要無かった。
「お、お、お前凄いな!!本当か!?でも嘘言ってもしょうがないしなぁ!なぁ、ウル!」
エルバは捲し立てる様に言った。その様子から嫌われたり悪い方向では無いように思い安心したが、そんなエルバと対称にウルは俯いて深く考えているようだった。
その様子を見て再び不安に駆られていると
「もしかすると、それが理由で思い出が無くなってるのかもしれない…」
そう呟くウルに、ハッとしたような表情をするエルバ。
どうやらウルとエルバは、自分の記憶が無い原因が異常な体に関してだと考えた様だ。
人体実験によって、体が変化し記憶を消された。
実験による恐怖で他人と性交出来ない状態になる事を恐れた。
確かに、辻褄が合うような気がする。
何も知らなければそれが正解のように感じるだろう。
真実を知っている自分以外は…。
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