第2話

歩きながら彼等は自己紹介をしてくれた。

男性の1人はウル。もう1人はエルバ。熊のような死体が乗った台車を片手で軽々と引きながら歩く女戦士はアマンダと言うらしい。

その後は、これから向かう町では何が美味しいとか、服は何処がいいとか、当たり障りのない会話をしてくれる。

多分、嫌な記憶を思い出さないように気を使ってくれているのだろう。優しい人たちだ。

特にアマンダは肩を組んできたりとスキンシップが激しく、元気付けてくれる。姉御肌って感じだ。

「アマンダ」

ウルがそう言うと、アマンダは自分から少し離れた。

エルバが近くに来る。

「すまない。彼女は良い奴ではあるんだがな。」

謝られたが、何を謝られてるのかよく分からなかった。

「えっと、何もされてないですよ?」

そう言うと、怪訝な顔する。

「彼女が過度に触ってきて不快だっただろう?」

アマンダは今まで見てきた女性の中でも美人の部類に入る。そんな女性にベタベタされても嬉しさはあれど、不快とは思わない。

「全然不快じゃないですよ。むしろ嬉しかったです。」

そう言うとエルバは驚愕を表し、慌ててウルに駆け寄り何かを話している。

何かを話されたウルもこちらを見て驚き、こちらに近寄ってきた。

「アマンダに触られても不快じゃないってのは本当か?」

そんな事を聞かれて素直に頷く。

それを見たエルバは慌ててこんな事を聞いてくる。

「じゃあ、アマンダと出来るのか?」

「エルバ!」

どうやら失礼な事を聞いたであろうエルバにウルが怒る。

「でも重要な事だ!」

言い合った後にこちらを見る。返答を待っているようだ。

出来るってなんだろうか。話の流れ的に性交の事でいいのか?

「具体的に何を言ってるのか分からなくて…」

それを聞いたウルとエルバは、ハッと思い出した顔をする。

「そういえば思い出が無くなったのだったな。そこら辺も分からないのか。」

ウルは悩みだした。

「これはかなり不味い問題だな…。」

エルバも同じく悩む。

「早くしないと暗くなっちまう。そろそろ進もうぜ。」

気がつけば足が止まって話し込んでおり、アマンダに歩くように促される。

「そうだな。歩きながら考える。少し考えさせてくれ。」

アマンダの言葉を聞いて、答えてから再び歩き出すウル。

「そこら辺はウルに任せるか」

「すいません。自分のせいで面倒を掛けてしまって…」

流石に申し訳なさを感じる。

「大丈夫だ。悪いのはお前じゃないさ。」

そんな風に言って笑うエルバに感謝の念を感じていると、町が見えた。

今いる場所は山か何かの様で上から見下ろす形となった。

「あれがこれから行く町だ。このまま行けば日が暮れる頃には着けるさ。」

見下ろした町は、四角く塀で囲まれた大きな区画が真ん中にあり、それにくっついたように複数の四角が幾つも外側にくっ付いている感じだ。

多分だが、先に四角く塀を作りその中に居住区や農業地帯を増やしているのだろう。

面白い造りをしているなと思った。


そこから町に向かうまでの間はアマンダの冒険譚を聞いた。冒険譚と言ってもどんな生き物を倒しただとかそんな事だ。

会話の始まりは、台車に乗ってる熊のような死体を見ていたらアマンダに声を掛けられた事からだった。

「こいつはバルムントって言ってな、肉が美味いんだ。結構な金にもなるし。帰ったら食わせてやるよ。」

バルムントがこの熊の様な生き物を指してるのはすぐ分かった。これを食べるのかと思ったが、実際に肉になってしまえばあんまり分からないから気にしないことにする。

「それは楽しみです。それにしてもこんな大きな生き物を倒せるなんて凄いですね。」

「こんなの大したやつじゃないよ。前には町の塀ほどもあるって言っても知らないか…。とにかくこいつより大きい奴も倒せるからな!その時は…」

こんな感じでアマンダは自分が狩人の中でも飛び抜けて居る事を教えてくれる。

少し大袈裟な所はエルバが茶化して指摘するが、狩人の中でも飛び抜けて居る事は間違っていないようだった。

そんなこんなで町にたどり着く。

高い塀は5メートルあろうかと言う高さだった。

どうやら石を重ねて作っているようでは無いので、全く未知の技術か魔法かと思われる。

塀とアンバランスな程の、高さは低いが横幅が広い門が存在する。

門は常に開いており、人が多い。

武装した人間ばかり目につく。しかしながら、チラホラと武装してない人も居る。

しかし、それ等が些細に感じる程の違和感。

それは圧倒的に女性ばかりで男が居ないと言うことだ。

何となく感じていた事は少しづつ確信に変わる。

この世界では極端に男性が少ないんだと。

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