雨音の間に言の葉を。

 この同じ世界に生きる、私がまだ出逢っていない人。

例え同じ街に住んでいたとしても、認識することもなく、通り過ぎていく沢山の人たち。


もしその日、雨が降らなければ。

もしその日、傘を持って出ていれば。


「私」と「彼」は出逢っていなかった。

いや、出逢っていたとしても、「私」とは関係のないままだったかもしれない。


明るくて、とてもノリの良い大学生の「彼」と、落ち着いてちょっと内向的な感じのする専門職の「私」。

明らかに「私」と「彼」は違う人種の人だから。


その日、雨宿りをしている「私」は、ずぶ濡れになり、騒々しく飛び込んできた歳下の「彼」に、会話の流れでハンドタオルを差し出します。


このハンドタオルも、彼が静かにお店の庇の下に入ってきたとしたら、彼のずぶ濡れ加減が気になったとしても渡さなかったんじゃないでしょうか。


設定もリアルで無理がなく、読者を戸惑わせることがありません。

会話の流れが、とても自然で本当にたまたまその場に居合わせて、小耳に挟んでいるような感覚になります。


始まったばかりの2人の関係は、まだまだ分岐点には辿り着いていないようです。


覗き見をしてる読者には、こそばゆくて、なかなかドキドキな展開です。


この後、2人の関係はどんなふうに進むのでしょうか。

雨は偶然を装って、「運命」を引き寄せたのかな?



とても静かでしっとりした文章が、会話が進むにつれて解きほぐれていく私の心を、しっかりと描き出していきます。



タイトルもとてもおしゃれですね!

続きも書かれるそうなので、楽しみです。


もしかしたら、こんなことが本当にあるかも。

読んでいる人を明るくしてくれそうな、素敵なお話です。


著者 水神鈴衣菜


「雨音の間に言の葉を。」

https://kakuyomu.jp/works/16816927862816975025/episodes/16816927862816975911

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