遺伝する思考


この話の冷たい結末を示すように、曇天に降きすさぶ激しい風雪の描写から始まります。

何処までも白い積もった雪、音をも攫っていく激しい風、視界は効かず、まるで一つのところをぐるぐる回っているような不吉さが全体を通して感じさせます。

必死で進む若い父親はその不吉な中を、生まれたばかりの我が子に逢うために病院に向けて歩き続けます。


その白い雪の密室が作者の異世界への扉で、そこから若者が出現します。

「ああ、この人は多分……」と推測されますが、ループに入るところで、結末への期待が高まるという仕掛けになっていて上手いと感じました。


終わり方の不条理さを突きつける鋭さが、星新一的で爽快です。


描写から来る文章の透明感と、ストンと落とせる強さのバランスが良いと思いました。


遺伝する思考

作者 おこげ


https://kakuyomu.jp/works/1177354054893741494



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