1-18『銀髪美少女なら養いたいと思いませんか?』3
俺は冬泉を風呂場に叩き込んだ。
包丁は取り上げたし、もう危険はないだろう。
冬泉はことのほか素直だったが、冷静に考えてみれば、いきなり部屋に無断で上がってきた見も知らぬ男とか怖いに決まっているため、そりゃ従順にもなろう。
俺はいったい何をしているのか。わからない。
「…………」
ただ、脱衣所に立つ冬泉に怯えの様子はもうなかった。
さきほどは押されていたようだったが、そもそも根本的に危害を加えられるとか盗難に遭うとか、そういった類いの警戒はしていないように思える。
俺という個人が、純粋に意味不明だったがゆえの恐怖(それもそれで俺が悲しいが)でしかなく、俺の目的さえわかってしまえば怯えることはないといった風情だ。
俺も、別に脅したいわけではなかったため、怖がられないに越したことはなかったのだが。
「下着類は? タオルとか……使えるのあるのか?」
「……さあ……知らない」
「お前、普段どうしてるんだよ……」
「……別に」
終始この調子とあっては、こちらとしても反応に困った。
「ああ、わかった。じゃあ探してくるから、先にシャワー浴びてろ。心配しなくても別にお前に欲情したりしねえよ――つって、信用されるとも思わねえけど……」
「なんでもいい」
「……お前はそう言う気がしたよ。わかった、なんでもいいんだな? 言質は取ったぞ」
一度、脱衣所から居間まで戻って、使えそうな着替えを探す。
これは幸い、まだ一度も使っていなさそうな新品が山ほど積まれていたため、そう迷うことはなかった。下着も、どうかとは思ったが持っていく。俺も正直、混乱していた。
脱衣所まで戻る。
すでに冬泉は服を脱いで浴室に入っていた。シャワーの流れる音が聞こえてくる。
「ここに置いておくぞ!」
言った瞬間、ガチャリと浴室の扉が開けられた。
「はあ!?」
びしょびしょに濡れた全裸の銀髪クラスメイト(しかも巨乳)とかいう映像。
いっそ逆にトラウマになりそうだ。咄嗟に顔を背けた俺に、冬泉はか細い口調で。
「お湯が出ない」
「あ? あー……えっと、待て。《運転》つけろ。そこのボタン押せ」
「……これ?」
「そう。ちょっと待ってればお湯に変わると思うぞ……いや、わからんけど。俺の家じゃないんですよね、ここ……で? どうだ」
「出た」
「そうか。今すぐ戸を閉めろ」
「わかった」
シャワーを浴びるだけでここまでの手間。
冬泉の体がどうだとか、そんなことは一瞬で気にならなくなる。ここまで羞恥心が欠けていること、それ自体が怖かったから。
シャワーの間に、近くのスーパーを利用させてもらった。鍵も申し訳ないが使わせてもらい、パックのご飯と、適当な食材を買い込む。
帰ってきたときがまた大変で、ほとんど体を拭いていないまだ全裸の冬泉が、あちこちびしょびしょにしながらリビングを歩いていたのだ。
「なーにしとんじゃお前は!」
「…………」
「ああもうわかった、じっとしとけ。拭いてやる!」
言う俺も言う俺だという自覚はあったが、聞く冬泉だって大概だ。
これ以降、俺は冬泉の髪を乾かしてやるのが恒例になる。その最初の一回目は、しかし気まずい沈黙だけが支配する地獄めいた時間だった。
「お前、普段は全部、家族にやってもらってるってことか?」
「……ここに住んでるのは、ぼくだけだ」
ぼく、という一人称にも驚いたが、それ以上にひとり暮らしというのが予想外すぎた。
ならばさっきのオッサンは……考えて、踏み込みすぎかと自重する。
「ひとり暮らしができる生活能力じゃねえだろ、お前。料理とかできんのか?」
手の中で、冬泉が首を横に振る。
そりゃそうだろう。わかりきっていた。
「言っとくが俺だって大して料理とか得意じゃねえんだからな。男の料理にあんま味とか見栄えとか期待しすぎんなよ?」
「……本気で作る気?」
「お前、ほとんど食ってないんだろ、だって」
こくり。
今度は縦に頷く感触。
「だったら仕方ないだろうが。まあ菓子類とか総菜とか適当に空けてるみたいだし、胃が弱ってるとかはないだろうが……野菜炒めとかその程度だぞ、俺ができんのは」
「流し、汚いけど」
「あれが汚いって認識はあんのな。まあ心配すんな、ここ自体は新しいし、お前たぶん、引っ越してきたばっかなんだろ? あそこ片すだけなら、そこまでの時間は食わん」
冬泉を着替えさせる。
ようやくみられる姿になって、初めて俺は冬泉を直視した。
銀色の髪。綺麗になればすごく美しいそれ。顔だってよく見れば悪くない。
「なんだ。かわいいじゃん、お前」
「…………」
冬泉がほんの少し、嫌そうな表情をしたのには気づいた。
「ああ、別に気にすんな。お前の顔の造形なんて、まあどうでもいいよ」
「……じゃあ、なんで」
「あ?」
「なんで、こんなことを……」
「――なんでって。さっき言っただろ。クラスメイトがこんな状態になってたら、普通に気になって当然だと思うんだけど。え、何? 今さらやめろとか言うのか……?」
さすがに。
さっきは熱くなってしまったけれど、帰れと言われれば従わざるを得ない。
警察に通報でもされたら、その時点で終わりみたいな状況であるのは割と事実だった。
「別に」
ただ冬泉には、その言葉には首を振った。
「どうでもいいだけ」
「……お前、自殺志願者とかか?」
「まさか。死にたいなんて思ったことないよ」
「なら」
「だけど生きたい理由もない。適当にやってて死ぬんなら、そこが終わりでいい」
「…………」
「こんなことしても、何も意味ないよ」
「――そうかよ」
俺は言って、そして立ち上がる。
それから部屋の、台所周りの掃除を始めた。
「なんで」
驚いた様子で冬泉は言った。
俺は、それに答える。
「何がだ? 掃除するって言ったばっかだろ」
「……だって、ぼくは」
「生きたい理由がないんだってな。そりゃわかったよ。でも、そんなの俺に関係あるか」
だって。
単純な話。
「――俺はお前に生きていてほしいんだ。わかったら黙ってそこで待ってろ」
「君、は……」
何かを言いかけて、けれど冬泉は首を振った。
初対面の、何も事情を知らない奴に、そんなことを言われてもという話だろう。それは俺だって承知していた。
あんな言葉はあてつけというか、苦し紛れの――でも、本心。
自分の都合だった。
ただ俺は中学時代のような気持ちを味わいたくなかっただけ。
生きたい理由がないなどと言う奴に――歯向かいたかっただけなのだ。
掃除を終わらせ、料理を作る。
時間は、さて――どれほどかかっただろう。よく記憶にない。
ただその間ずっと、冬泉は静かにソファに座っていた。
何か考えて込んでいる様子ではあったが、それが何かは俺にはわからない。俺はそれほどには冬泉を知らなかった。
「できたぞ。座ってくれ」
作ったのは肉野菜炒めである。
俺が料理に気合いを入れ始めるのはこのあとのことで、当時まだロクなレパートリーを持っていなかった。
味つけてフライパンで炒めりゃできるだろ、程度が限界なのである。
味噌汁もご飯もレトルトのもの。
正直、勢いきって披露できるような出来じゃなかったことは認めざるを得ない。
「ほら食え」
それでもまあ、ここまで来たら流れというかなんというか。
味に文句を言われたら、それはそれでいいだろう。そんなふうに考えていた。
のそりとテーブルについた冬泉は、並べられた食事をまず見て、それから俺の顔を見て。
「……こんなことしたって、なんの意味もない」
小さく、言った。
意味がない、とは効く言葉だ。
確かに、俺の行動には何も意味がなかったのだろう。
でも。
「いいから食えよ、冷めちゃうでしょ」
「……いいことしてるつもり?」
「あ?」
「こんなことして。今日、ぼくがこれを食べたとして。明日からは? ぼくはこれからも変わらない。君の安い同情に付き合うのは、この一回を最後にしたいね」
「――――」
言いながら、それでも冬泉は箸を手に取った。
拒否すらしない。
彼女の言う《どうでもいい》は本当に言葉の通りなのだ。
言われた通り今は食べる。
そして、俺が帰れば元に戻る。
そういうことなのだ。
だから何も意味がない、と彼女は俺に言っていた。
「別に、同情なんてしたつもりねえよ。知らん奴に同情する方法とか、普通にねえだろ」
俺は言った。これは別に、嘘ではないつもりだった。
というか、俺は初めから大したことを考えてはいなかったのだ。
「だったらこういうのはやめるべきだろう。それとも何か? 君は毎日ここへ来て、毎日ぼくのために料理を作るとでも言うのか? ぼくの世話をして人生を使い潰すとでも?」
「…………」
「できないだろう、そんなこと。だったら――」
「――いや。そんなことでいいんだったら、普通にやるけど」
このとき言った、この言葉が。
俺と冬泉との、最初の接点。
「――――はあっ!?」
「いや、むしろ逆にいいのか? 来ても。まあそりゃ、毎日必ずとは言わんけど、普通に部屋の片づけとか、メシ作るくらいだったらいいよ。やるよ。でもお前、食費は出せよ」
呆然と、あり得ないものを見る目を、冬泉は俺に向けていた。
だが、これは冬泉の考え足らずだったのだ。無理難題を吹っかければ俺を追い払えるとでも思ったのだろうが、なんてことない。むしろ許可まで貰えるなんてありがたいね。
「き、君は、……自分が何を言ってるのかわかってるのか?」
「あ? わかってるよ。だってお前、生きたくないんだろ自力で? だったら誰かが世話するしかねえじゃねえかよ。その間はお前、死なないんだろ。じゃ選択肢ねえじゃん」
「――――」
「だからお前、俺が来てる間は生きてろ。――俺が、今日からお前の生きる
冬泉は完全に固まっていた。
しかしまあ今さら、吐いた言葉は飲み込めない。
「別にお前の事情なんか知らねえし、むしろまだ十代のクセに生きたくないだのなんだの言ってる奴ぁ、俺は嫌いだけどな! お前嫌い!」
「な、」
「――でも生きろ。俺に見つかったのがお前の運の尽きだよ馬鹿め。残念だったな?」
なぜこんな無茶苦茶を言ったのか、自分でもわかっていない。
いや。それでも俺は、手を伸ばせば生きられる奴が、目の前で落ちていくのを見過ごすことができなかった。それだけは、絶対にしたくなかったのだ――もう二度と。
言った通りだ。ほかに、選択肢がなかっただけ。
「……なら。ぼくは、君がいつかぼくに飽きて、来なくなることに賭けよう」
果たして冬泉はそう言った。
事実上、それは俺の勝ちを意味する。少なくとも俺はそう認識した。
「そりゃ分の悪い賭けだな、冬泉。負けを覚悟をしておけ」
「よく言うよ。君は、まだぼくという人間をわかっていないだけに過ぎないんだ」
「そうかよ。つか、んなことより早く食えっての」
冬泉は箸を手に取って。
俺が作った、誰にでも作れる程度の肉野菜炒めを、口に入れた。
「で、冬泉」
「……うん」
「味、どうだ」
「…………うん」
「美味いか」
「……………………………………………………………………………………ゔんっ」
料理なんて、せいぜい家族くらいにしか食べてもらったことがないが。
初めて食わせた奴がここまで泣くなら、意外に才能があるのかもしれないと思った。
※
走ってしまえば、冬泉の家は学校から近い。すぐに着いた。
そういえば、あいつ合鍵も返されてないのに何をお別れ感を出していたのだろう。それ普通に返すとき気まずくなっちゃうやつじゃんね、あのお間抜けさんめ。
俺は普段通りエントランスの自動ドアを開けて中へ。
エレベーターで十五階に昇っていく。
何を言うべきだろう。考えが纏まっていない。
正直、なぜ急に冬泉が『もう来なくていい』と言い出したのかがわからない。もう俺が愛想を尽かされたのだとしたら、世話する側としてかなり釈然としない。
ただまあ、ない話ではないとも思っていた。
あいつがもう、生きる気力を完全に失ったとするのなら。
俺が身の回りを世話することすら、億劫だというのなら。
冬泉は、このまま緩慢に、生きることをやめてしまうのではないかという危惧がある。
「……させるかよ」
エレベーターを降りて扉の前へ。
俺は、冬泉小姫のことをほとんど知らない。
一年の付き合いがあってなお、聞いていないことだらけだった。
別にいい。
それが悪いと思っているわけじゃない。
俺の知らない冬泉のこれまでなんかじゃなくて、こうしていっしょにいたことの価値が知りたかった。それだけだ。
鍵を開けて部屋の中に入った。
相変わらずどこも電気がついていない。この部屋はいつも暗いイメージだ。
廊下をまっすぐ進んで、居間へ続く扉を開く。テーブル。ソファ。大型のテレビ。投げ出された衣服や、飾り気のないインテリア。
そして、すぐ目の前に続いているキッチン。
小さな明かりが点くそこに、冬泉小姫が立っていた。
――その手に、いつかのように、包丁を持って。
いや。それだけじゃない。
よく見れば、冬泉の手に赤い色が見えた気がして――。
「冬泉っ!!」
「――うわあっ!? え、あれっ、伊吹く――」
「お前いったい何やってんだ――……って、……え?」
よく見れば、最近また片づけたばかりの台所の上が散らかっている。
ニンジンや玉ねぎといった食材が並ぶそれは、まるで料理をしている途中のようで。
「……な、なんだ。料理かよ、びっくりしたなオイ……っ!」
「び、びっくりはこちらの台詞だよ、伊吹くんっ」
言いながら冬泉が、左手の人差し指を唇にくわえた。
どうも、指先を切ってしまっただけらしい。……マジで驚かせやがって、ったく。
「――って冬泉が料理をしているだと!?」
「遅れてツッコミが来たね」
衝撃を受ける俺に、冬泉は苦笑。
包丁を置くと、エプロンをつけたままこちらへ近づいてきた。
「学校が終わったらすぐに来るとはね……まあ、君らしいのかもしれないけど。ていうか、そっか。そういえば、合鍵は渡したままだったっけ。ぼくとしたことがうっかりだよ」
「……指、大丈夫なのかよ」
「ん、――ああ。恥ずかしいところを見られちゃったな。でもまあ、大丈夫さ。ちょっと切っただけだからね。うん、あはは。やっぱりぼくに――こういうのは向いてないかも」
「……なんで」
なんで、今まであれだけ言っても直さなかった奴が。
急に、自分ひとりで生きて行こうと――いや。本当にそうなのか?
「あはは。せめてあと二年、無理でも一年はどうにか持たせようと思ったんだけど……」
冬泉は言う。そうだ、期間が短すぎる。
つまり冬泉は、自分ひとりで生きて行こうなどとはこれっぽっちも考えていない。
「ごめんね、伊吹くん。やっぱりぼくにはどこを探しても、生きる理由が見当たらない」
「……冬泉」
「あの賭けはぼくの負けだよ。君はまったく、一度だってぼくを投げ出さなかった。ここまでやられちゃ、ぼくだって負けを認めるしかないよね。君は本当に素敵な男だ。ぼくも実際、君を理由にして生きて行けるのなら――それでもいいかと思っていた」
だけどね。
と、冬泉は言う。
「それはわたしの都合であって、君は違う。君には、伊吹くんには……ぼく以外の世界がいくらだってあるじゃないか。それを――ぼくひとりの都合で、使い潰せないよ」
「何、……言って」
「何って。わからないかなあ? 伝わらないね。そりゃあ、最初はすぐに諦めると思っていたよ。諦めないなら、それはそれで都合がいいから、どうでもいいと思っていた。でも伊吹くん。ぼくだって何も、人の心がない怪物ってわけじゃないんだよ?」
「……お前、」
「初めて会ったときに、君は言ったね。ぼくみたいな奴は嫌いだって。でも、伊吹くん。君はこんなことを言われても迷惑かもしれないけれど。ぼくは初めて会ったあのときからずっと。会うたびにもっと。とっても。――君のことが、本当に本当に大好きなんだ」
冬泉は言った。
理由なんてそれしかないのだと。
「ぼくは、伊吹くんさえいれば、それでよかった。それで、いいってことにしたんだ」
だがそれは、恋愛感情などではなかった。
友愛でもなければ、親愛でもなく、言うなればただの無垢だった。
「だけどぼくは、そんなぼくの事情を、君に強いるほど愚かにはなれない。だって、伊吹くん。わかるだろう? ぼくは君のことが好きだ。君だけが好きだ。つまり――」
彼女の世界には、等しく価値がゼロのものしか転がっていない。
その中でたったひとつ、俺だけに1の価値をつけた。
――これはそういう、あまりにも歪みきった、執着ですらない唯一性。
「ぼくは自分のことなんて、これっぽちも好きじゃないんだからさ」
――ほら、そんな女になんか。
大好きな伊吹くんを、預けられるものかよ――。
まるで、何者をも愛せない怪物が、ひとかけら学習した理性を話すような。
そんな――あまりにも馬鹿げた告白だった。
「は……、そういうことかよ」
だから俺は笑った。
だって、そんなものは今さらだ。
冬泉は確かに普通じゃない。でもそんなもの、わかった上でここにいる。
「要するにお前、一丁前に俺に気を遣ったつもりなのか」
「君は、だって伊吹くん。人を救える人間だ。――そのことは今日見た通りだろう」
銅後輩の件を言っているのだろう。
まったく。いつだって冬泉は、俺への過大評価ばかりでいけない。
「でも、冬泉。だからって、今までさせるだけ世話させといて、それでハイさよならっていうのは、ちょっと虫がいいんじゃないか?」
「ああ、そうだね。そこを突っ込まれると返す言葉がないよ。確かにぼくは、君から貰うばかりで、何ひとつ返せていない。だけど――今、ぼくが君にあげられるものがある?」
俺は考えた。
今、ここで俺がするべきことはなんだろうと。
その答えをたったひとつだけ、どうにか見つけることができた。
「あるね。だから今ここで、これまでの貸しを徴収させてもらうことにする」
「ええと……伊吹くん。ぼくは何をすればいいんだ?」
「立ってりゃいいさ」
「え?」
言って。
俺は。
両手を伸ばして冬泉の胸を揉んだ。
「――――、ふえっ?」
両眼を大きく見開く冬泉。
うん。ごめんな。いろいろ考えたんだけどさ。
――やっぱ俺かなりバカなんだよな。
「いやてか、う、おぉ……いやあのなんつーかあの、えっと――すごいっすね?」
「あぅあ?」
冬泉は顔を真っ赤にして、その場にぺたりとへたり込んだ。
口をあうあう動かしながら、言葉にならない声とともに俺を見上げている。
俺は言った。
「その、……ありがとうございました」
「……………………にゃにがぁ?」
すみません。
わかりません。
でも。
「――自分で言うだけのことはあったな。気持ちよかった。正直」
「あ、えと……あぅう」
「だからさ、冬泉。――これで、お前と俺は、もう対等なんじゃねえの?」
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