第7話 海と古き友

薄汚い森を歩くこと約2日。途中、何回も野宿をした。ただ、シダレが気になる発言をしていた。

「魔物がいない?」

「うん。こんな薄汚い森になら、いてもよさそうなんだけど…そもそも、この森からは。ひょっとしたら、この森結構危険かもしれない……」

「え……」

危険って……

なんとなく雰囲気でわかるけど。

「あ、そうだ。北にはなにがあるの?」

「あぁ、北にはがあるんだよ。」

「……海?」

「海」

「古い友達って……」

「深海の神。」

ん?聞き間違いか……?

「神様が、シダレの古い友達なのか?」

「そうだよ。深海の神ホノエール。名前から想像できるかもだけど、見た目はくじらだからね。」

深海の神様が……クジラ。

そのクジラが、シダレの古い友達。

もうわかんねぇ。

「まぁ、多分もう少しで海が見えるはずだからーもう少し歩きましょ」

「あいあいさー」


歩いて1時間ぐらいだろうか。

どこからか波の音が聞こえた。

「シダレ!聞こえた!?」

「聞こえたわよ。結構近くまで来たみたい。」

俺は少し小走りで森を抜けた。

「あ、待ってよ!!」

シダレも森を抜けた。

森を抜けた先には―

至って普通の砂浜があって、海が目の前に広がっているだけだった。

「で、どうやったら深海の神様に会えるんだ?」

「私が呼べばすぐ来るわよ。ちょっと大声出すけどね」

そう言いつつ、深く深呼吸をして、息を吸い―


「「ホノーーー!!!!!!」」


と叫んだ。

それからまもなく。海面からすごい勢いでクジラが出てきた。

大きさは―大きすぎて分からなかった。

俺は呆気にとられていた。一方のシダレは、ホノエールを見た途端なにか思い出したような顔をしていたが、すぐに表情が変わって―

「ホノ!!久しぶり!!私の事覚えてる?」

と聞いていた。

すると―

「まさか…桜姫なのか?」

という女の人の声が。もしかして…このクジラ様、喋れるの……?

「そうだよ!!桜姫だよ!!元気にしてた?」

「久しぶりだな!!私はこの通り元気にしてるよ!!そっちこそ元気にしてた?」

「うん!おかげさまでね…」

「で、隣にいる子は誰だ?」

クジラ様の目線がシダレから俺に移った。

「あ…お、俺は―」

「私が紹介するよ。この子はハルキ。転生者で―私のマスター

「なっ―!!あなた……自分で何したか分かってんのか?」

「えぇ……。どうなってもいい。でも、ハルキと一緒に旅をしたいの。」

「あなた……それ、だったよね?それに前回は。」

失敗……?前回…?

なんの話だ……?

「いいの。私はもう、神様を辞めるわ。あんな囚われた國に住むのは―もう嫌なの」

シダレは、少し悲しい顔をして言った。

「そうか……。それにしても、あなたがそんなに気に入る人間なんて珍しいわね。ちょっと興味が湧いてきたわ!!」

「え……?」

思わず声が出た。

「人間。いや、ハルキと言ったか。私と1回戦ってみないか?」

た、戦い!?神様と?

バチが当たりそうだよ……

「い、いえ……神様と戦うなんて出来ないです。それに、武器もありませんし……」

と言うと、少し間が空いて―


「あっははははは!!!!」


と大笑いされた。

「あ、いや、ごめんね。確かに桜姫が気に入るわけだ。人間はこんなに面白いやつもいるのか!!」

「面白い……ですか?」

「ああ。実に面白いよ。」

「そうですか……」

すごい威圧感があるけど、結構優しい神様なんだなぁと内心思った。

「あ、そうそう。今日ホノに会いに来たのは、もう1つ理由があって―」

「……。深海の加護、か?」

「う、うん……できれば、ハルキにあげたいんだけど……」

「そうだな……。じゃあ、私と全力で戦ってくれればあげるぞ!!私が勝とうが負けようが。」

ん?待って。俺を抜いて話進めないで。

加護ってなに?ちょっ、教えてよ!!

というより、嫌な予感しかしない。

「わかった!!じゃあ約束ね!」

あ。察したわ。

シダレはくるっと俺の方に向き―

「ということで、戦って?」

と、笑顔で言われた。

「い、嫌だよ……さっきも言ったけど、武器もないし……」

「大丈夫。武器はちゃんと用意するし。それに、加護ってとーってもいいんだよ?」

「えぇ……」

俺は少し考えた。


数分後、出した答えは―

「俺、神様と戦います……」

「YES!!よく言った!!」

「2人とも頑張ってね!」

クジラ様はハイテンションに、俺はしょんぼり。シダレはすごくワクワクしてる。


誰か、助けて……

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