第3話 ドアの向こうに
高校3年生になった春の日に、事件は起こった。
桜吹雪が舞う、4月の中旬。
いつものように部屋のドアを開けた―――
つもりだった。
「……え?」
ドアの向こう側は、俺のいつもの部屋じゃなかった。
果てしなく広がる大地。辺り一面に桜が咲いている。小川が流れており、とても幻想的な場所だった。よく見てみたいなと思い、その場所に入ろうとした瞬間―
「…誰?」
と、女の子の可愛らしい声が聞こえた。
どこからだろうと思いながらキョロキョロしていると、
「ここよ、ここ」
―目の前にいた。かなり小さい子だった。銀髪に緑眼、桜の髪飾りに、薄ピンク色の振袖。
……なんだろう。小動物感半端ないんだが。
「あなた、名前は?」
「こ、寿春姫っていいます…」
「ハルキね。じゃあ、ここの場所の説明をするけど―まず、あなたにそのドアを閉める覚悟はあるのかしら」
「と言うと?」
「足を踏み入れて、そのドアを閉めればあなたは元の世界に帰れなくなる。つまり、死ぬと同じかな。」
死ぬ……か。
「ここで一生暮らすのか?」
「それもいいけど―転生するのが1番ね。」
「なぜ?」
「あなた、若すぎ」
……。
「17歳なんだが…?」
「若いわね。私はもう数えるのをやめたから覚えてないわね。ざっと万くらいはいってるかしら。」
ま、万……
ということは…ロリバb―
「あなた、失礼なこと考えてないでしょうね。……一応、12歳にしておいて。」
「す、すみません……。わかりました」
「まぁいいわ。で、閉める覚悟はあるのかい?」
「はい。」
「じゃあ、閉めてきて」
俺は、後ろのドアをゆっくりと閉めた。
「いらっしゃい。ここは幻想郷【桜の國】。私1人で暮らしている場所よ。」
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