第17話幸せな世界

花子さんは認知症はかなり進み、箸の使い方もわからず、

お昼ごはんは目の前に出されれば、手でつかみ食べてしまう。


排出も自分ではもう感覚はなくなり、垂れ流しになってしまう。

家族は誰も彼女の面倒を見ようとしない。家では専用の部屋に置きっぱなしだ。


だけれども彼女はいつも笑顔なのだ。大好きな東京カンカン娘を口ずさみながら、いい人ばかりで食べたいものを運んでくれるの、

と話す。本当に嬉しそうな顔をする。


幸せそうなその表情に私達はいつも癒される。

彼女の脳の中の住んでいる世界は幸せに満ちているから!


こんなに素晴らしい事はない。スタッフ全員から愛される人だ。


逆に認知症にならないで病になり、どんどん動けなくなり、歩けなくなり、現実的な自分をわかっていると怖さでいっぱいになり、

寝る事で現実逃避したり、余計に動けなくなる。


死への恐怖心、どうにもならない思い。

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