第15話 旅行に誘ってみた!
早速、ニューヨーク見物のスケジュールを考えてみる。こちらへ赴任してきてから、主だったところへは休日に出かけていた。
また、本社や研究所から研究開発の打ち合わせに来た人たちにアテンドして市街の案内をすることもしばしばだったので、ざっと1週間のスケジュール案を作ってメールで送った。あとから二人の希望を入れて変更するからと付言しておいた。
土曜日 金沢⇒東京⇒成田1640発 NY1635着、空港出迎え(リムジン)⇒ホテル⇒食事
日曜日 NY市街見物(二階建てバス)⇒食事
月曜日 NY市街見物(二階建てバス)⇒ミュージカル鑑賞(夜)
火曜日 ワシントン1日ツアー参加:ピックアップホテルへ同行
水曜日 NY市街見物(メトロポリタンミュージアム、MOMA)⇒ナイトクルージング(食事つき):1日同行
木曜日 ナイヤガラ1日ツアー参加:ピックアップホテルへ同行
金曜日 NY市街見物&買い物&土産物(五番街、デパート)⇒食事:1日同行
土曜日 ホテルピックアップ⇒空港へ見送り(リムジン予約)NY1200発 見送り
日曜日 成田1500着⇒東京⇒金沢
金曜日の午後8時が待ち遠しかった。すぐに彼女が画面に現れた。いつもよりも表情が明るい。
「スケジュール案を見てくれた?」
「はい、随分盛沢山ですね」
「土曜日に現地を出発して日曜日の夜に現地へ戻るスケジュールだけどタイトなら1日短くすることもできるけど?」
「せっかく行くのだから、目一杯、そちらに居たいと思います。大森さんも同じ意見です」
「それで希望というか、是非行ってみたい場所やしたいことはあるの? 例えば、美術館へ行きたいとか、こちらで流行の服を買いたいとか、毎晩ミュージカルを見たいとか?」
「お勧めは何ですか? 大森さんに聞いてみてと頼まれたから」
「まず、エンパイヤ・ステート・ビル、ここに上るとニューヨーク市街が一望できる。夜景もいい。それから、自由の女神かな。ディナー・クルーズに乗ると、近くで見ることができる。ディナー・クルーズは日本から来た人を案内して皆さんに好評だった。これはお勧めだ」
「ほかには?」
「絵画や美術品が鑑賞したいなら、メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館を勧める。近代フレンチアートの名画がたくさんある。絵画好きにはたまらないと思う」
「そうね、私も見てみたい」
「本場のミュージカルはどう? ただ、僕はあまり勧めない。英語だから意味が分からないし、それと時差があるから、大概の人は途中で眠ってしまう。それに人気のある作品は予約が取りづらい」
「後学のために1つくらい見てもいいかな。大森さんと相談してみる」
「市街の名所は二階建てバスが走っているからそれに乗って回ると効率的だ。バスに乗っているだけで見物できる。地下鉄を利用するのもいいけど」
「二階建てバスには乗りたいな」
「ほかに日帰りのオプションツアーに行くことを勧める。特にナイヤガラ1日観光を勧める。有名ホテル前でピックアップしてくれる日本語観光ツアーが便利だ。帰りもホテルまで送ってくれるから、安心して参加できる。首都ワシントンの1日観光もある。ホワイトハウスが見られるし、ワシントンの美術館、博物館がたくさん見られる」
「ナイヤガラの滝は行けるなら行ってみたい。大森さんもそう言うと思う」
「まだ、時間は十分あるから、大森さんとも相談してみて。スケジュールが決まったら、会社の事務所で使っている旅行代理店で航空券やホテル、ツアーの予約をしてあげる。費用は普通の格安ツアーと同じくらいと思っていてくれればいい」
「分かりました。大森さんと相談して、来週にお返事します」
「じゃあ、よく検討してみて。分からないことがあったら、メールを入れてくれればいいから。じゃあ」
紗奈恵は僕の考えたスケジュールを喜んでくれたみたいだ。相談しているとまるで恋人と旅行の相談をしているような錯覚に陥ってしまう。これで来週も話ができる。
◆◆◆
次週の定時の打ち合わせで、スケジュールは大森さんの意見も取り入れて以下のとおりになった。
土曜日 金沢⇒東京⇒成田16:40発 NY16:35着、空港出迎え(リムジン)⇒ホテル⇒夕食
日曜日 NY市街見物(二階建てバス)⇒夕食
月曜日 NY市街見物(二階建てバス)⇒夕食⇒ミュージカル(シカゴ)鑑賞
火曜日 ナイヤガラ1日ツアー:朝ピックアップホテルへ同行
水曜日 NY市街見物(メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館など)⇒ナイトディナークルージング:1日同行
木曜日 ワシントン1日ツアー:朝ピックアップホテルへ同行
金曜日 NY市街見物&買い物&土産物(五番街、デパート)⇒夕食:1日同行
土曜日 8:30ホテルでピックアップ⇒空港へ見送り(リムジン)NY12:00発
日曜日 成田15:00着⇒東京⇒金沢
大森さんはフランス印象派の絵画が見たいのと、本場のミュージカルは見ておきたいとの意見だったそうだ。2つのオプションツアーにもぜひ行ってみたいとのことだった。
僕は仕事のスケジュールを見て、そして僕はこの週に夏休みを3日間ほど取ることにした。土曜日の出迎え、日曜日の市内観光、月曜日の市内観光、水曜日の市内観光、金曜日の市内観光、土曜日の見送りをすることで伝えておいた。予定はほぼかたまった。ホテルはツインを予約してほしいとのことだった。
それから、毎週、スケジュールの詳細を相談した。紗奈恵はまるで現地のガイドさんが付き添ってくれるみたいで安心して行けると言っていた。
出発の1か月前にスケジュールを確定して旅行会社に航空券やホテルの予約を確定してもらった。支払いは二人のクレジット番号を教えてもらってそれぞれが支払うようにした。費用はかなり低く抑えられた。
あれから毎週定時に紗奈恵とは連絡を取っている。航空券が届いたとの連絡があったのは、出発の2週間前だった。これで準備は整った。
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