親父と話す夜

「円香は今、家で居候している。円香の親御さん・・・真司しんじさんと彩香あやかさんにはもう許可を貰ったって言ってた」


「どっちから一緒に住もうと言い出したんだ?」


「円香が勝手に家に転がり込んできた」


「寝室は?」


「基本、俺の部屋で寝てる」


「・・・避妊はしたのか?」


「一応・・・」


「そうか。もし、妊娠したらどうするつもりだ?」


「アイドル辞めて、俺と一緒に子供育てたいと言っていた」


「・・・そうか。一回、円香ちゃんを交えて話した方がいいな」




親父は一度、そう言って立ち去ると、円香を連れて再びやってきた。




「ごめんなさい、昭徳おじさん。私、おじさんの気にそぐわないことをしていたら、荷物をまとめて家に帰ります」


「・・・いや、いい。避妊さえしとけば俺はそこまで言わない」


「親父・・・」


「実は言うとな、俺も母さんを妊娠させて結婚しちまったんだ。要は・・・でき婚なんだ。その時授かった子供が・・・彰人、お前なんだ」




親父は2人の前で、お袋との結婚について語り出した。




「俺はまだ新人作家だったし、母さんも高校を卒業したばかりだった。当然、俺も母さんの親も猛反対したよ。お互いお金がないのに、先が見えない仕事なのに、どう子供を育てるんだ・・・ってね」


「そうだったんですか・・・」


「・・・結局、駆け落ち同然に結婚しちまったんだがな」


「私、彰人のこと何も知らなかったのかも・・・」


「円香ちゃん、親御さんにはお互い健全な交際をしていますので、安心してくださいって伝えるから安心してくれ」


「わかりました。昭徳おじさん、ありがとうございました」


「あと一応、彰人にも言っておくが、円香はお前が思っている以上に大人気なアイドルなんだぞ。つまりお前は今、大切な商品を扱っているんだ。もし、お前がその商品に手を出したことが世間に知れ渡ったら・・・どうなるか分かっているだろうな」




俺はしばらく黙り込むしかなかった。そして、俺と円香は書斎から退室する。2人が揃って退室する際、親父の口から「これ、小野寺さんの家に伝えたら、赤飯炊くまでいくかもしれないな・・・」と言う小声が聞こえたのだった。

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