妹のいる夜

風呂から上がった俺は、寝間着を取りに2階へ上がりに行った。




「おーい、風呂あがったぞー」


「はーい。少し待ってて!」




俺が菜月の部屋をノックし、声を飛ばすとすぐに扉越しから返事が返ってきた。

声色からして、少しばかり焦っているようだ。




「おーい、大丈夫か。どうしたー?」


「うん、実は言うと・・・私、クラス委員の資料を無くしちゃって・・・」




心地よいドアの音と共に菜月の姿が現れる。息を荒くし、いつも以上に顔色を悪くしている。


菜月は自分から立候補し、クラス委員になった訳では無く、クラスメイトや、他のクラスからの推薦が非常に多く、特に断る理由もなく引き受けたらしい。


だが、意外に少し抜けているところがあり、度々物忘れが多く、なぜ引き受けたのかと疑問に思ってしまう。しかし人から頼み事をされると、断れない性格なのだ。




「まあ、さ。一旦全部忘れて風呂入れよ。リッラクスしてたら急に思い出したりするんじゃね?」


「そうだね・・・確かにその方が合理的かも!ありがとう、お兄ちゃん」


「へいへい。別にそんなご丁寧に礼を言われる程の事じゃねーけどな」


「もう!どんな時にもお礼を言うことはとっても大切な事なんだよ!」




そう言うと、菜月はすたすたと一言も喋らず、風呂場の方へ無言で向かっていった。そして俺も菜月が風呂場のドアを開けるタイミングと同時に1階の居間に向かった。






居間に戻った俺は早速テレビを見る。時刻は夜の8時。番組が始まった早々、円香が登場した。




『今夜のゲストは、ティンクル・ガールズの小野寺円香おのでらまどかさんです!』




まず、女性アナウンサーが円香のことを紹介している。そして、司会のお笑い芸人から色々話を聞かされている。・・・テレビではかわい子ぶってるけど、実際の円香は暴力ヒステリー女である。まぁ、顔自体はめっちゃ可愛いんだけどさ・・・




『円香、お前テレビ出てるぞ』


『知ってる』


『じゃあ、今見てるのか?』


『うん。当たり前でしょ』




俺は円香にLINEを送信した。すぐ返事が届いたが、素っ気ない。そして1時間が経ち、番組が終了。・・・明日もクラスは円香の話題で持ち切りになりそうだな。


それと時を同じくして、菜月が風呂から上がってきた。風呂から上がり、寝間着姿に変わった菜月の姿は・・・めっちゃ可愛い。




「お兄ちゃん。ちょっと悪いけど、私これからドラマ見るから」


「ん?ああ、わかった」




時刻は夜の9時になり、チャンネルの主導権は俺から菜月が変わる。・・・これから菜月が出演するドラマが放送されるからな。


菜月が演じる役はこのドラマでも主役に近い、小学6年生の女の子だった。要は主人公である母親の一人娘である。ドラマの内容は・・・ここでは言えないかな。




そして夜10時、ドラマの放送が終わってしばらくした時・・・




「あ、見つかった」




菜月が探していたクラス委員の資料が、机の下から見つかったのであった。俺は「よかったな」と菜月に言う。すると菜月は、




「やっぱりお風呂に入ったのが大きかったのかもね。ありがとう、お兄ちゃん!」




と俺に向かって最高の笑顔を出したのであった。そしてしばらくして、




「明日は学校あるし、もう寝るね。おやすみ」




と菜月は2階の自室に向かったのであった。そして俺も、菜月の後を追うかのように2階の自室に向かい、眠りについた。

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